【特集】地元勢が大活躍! 花咲徳栄の団体準優勝に続き、埼玉栄が3位へ【2008年8月4日】






 ことしのインターハイのホスト県は埼玉。地元開催県からは学校対抗戦に2チームの出場が認められる。今年のインターハイ予選で優勝した花咲徳栄は、関東大会で霞ヶ浦をも撃破し波乗っていた。初優勝を目指してインターハイに臨んだが、決勝戦で力尽きて悔しい準優勝に終わり、全国制覇は来春の全国選抜大会までお預けとなった。

 一方、埼玉2位として全国大会の舞台に立ったのは埼玉栄。レスリング部の歴史は長く、先輩には昨年の世界選手権代表で北京五輪トライアルでも活躍した鈴木豊(自衛隊)などがいる。しかし、花咲徳栄がレスリング部を創設し、強化をはかると、いつの間にか後塵を拝してしまった。野口篤史監督は「実はことし、一度も団体戦で勝ったことがなかったんです」と衝撃の事実を告白した。

■埼玉栄が3回戦で昨年の優勝校を破る!

 勝つ感覚を忘れてしまった埼玉栄はインターハイの初戦でも苦戦する。「5−2くらいで勝てると思っていた」(野口監督)と臨んだ奈良広陵との初戦(2回戦)で120s級にもつれる大接戦で、地元の関係者をハラハラさせた。続く3回戦は昨年優勝チームの秋田商。去年ほどの力はないと周囲から見られていた秋田商だが、「勝つことを忘れた」埼玉栄にとっては、名前を聞いただけで震え上がってしまう強豪チームに変わりはない
(右写真=秋田商の選手相手に臆することなく闘った埼玉栄の選手たち)

 だが、久々の白星を味わったチームには地元の応援も手伝って、勢いが出てきた。「うちの看板は84s級の牧瀬竜二と120s級の大山瑛之。勝負は74s級の山崎健太だと思って、ある作戦をさずけました。作戦は秘密なので言えませんけど(笑)」。3−1で出番が回ってきた山崎は、野口監督の作戦通りに試合を敢行。秋田商業から4つ目の白星を奪取し、ディフェンディング・チャンピオン・チームを撃破した
(左下=秋田商に勝って野口監督に駆け寄った山崎)

 花咲徳栄が難なく上位進出を決める中、埼玉栄はすべて4−3と紙一重の勝負で勝ち上がっていった。主将の大山は「各県で2チーム出られるのは、またとないチャンス。メダルを目標にがんばってきた」と強い決意があったことを明らかにした。目標のメダルまであと一つ。準々決勝の壁は、野口監督率いる埼玉栄が一度も勝った事がない上田西だった。

 意外にも一番弱気だったのは野口監督。「もうだめかもしれないと思いましたよ」。だが、監督の心配をよそに選手たちは奮闘した。監督が看板選手と太鼓判を押す84s級の牧瀬とアップの大山が、2回戦の秋田商業の敗戦をバネに、上田西相手に食らいつき、またも4−3で強豪・上田西を破った。

■手塩にかけてきた選手たちが地元インターハイで花開いた

 「花咲徳栄さんがライバルで、勝てない時期は苦しかった」と、埼玉では無敵だったチームが白星の感覚を忘れるほど、ことしは苦しかった。ちびっこからエリートで勝ち進んできた選手を多く擁する花咲徳栄とは対照的に、埼玉栄は高校からレスリングを始めた選手が多い。「66s級の保坂健、84s級の牧瀬だけが経験者。120s級の大山も中学からやってましたけど、プロレスが好きで始めたレスリングでしたので、プロレスの延長の練習しかしてませんでした」。一から手塩にかけて育ててきた選手たちが、地元開催という大舞台で最高の力を発揮した。

 優勝できる戦力を持つ花咲徳栄が準優勝に終わったことは残念なこと。しかし、埼玉県勢としてベスト4に地元勢が2チーム入賞したことは埼玉関係者にとって、つい笑顔になってしまう最高の結果だった。

(文・撮影=増渕由気子)


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