【特集】「世界ジュニア3位になった兄に負けたくない!」…84kg級・平川翔次(福岡・三井)【2008年8月5日】






 2大会連続五輪代表の池松和彦選手(男子フリースタイル66kg級)の母校、三井高校旋風が止まらない! インターハイ84s級で平川翔次が初優勝を成し遂げた(右写真=決勝で佐々木健吾を破る)。全国高校選抜チャンピオンの菊池崚(茨城・霞ヶ浦)が準々決勝で敗退する波乱の中、平川が実力を発揮してトーナメントを制した。

 三井の主将を任され、最後のインターハイを迎えた平川は、あるプレッシャーと闘っていた。兄・臣一(専大=グレコローマン120s級)の存在だ。世界で苦戦続きの重量級ながら、先月下旬にトルコ・イスタンブールで行われた世界ジュニア選手権で3位入賞の快挙を成し遂げたからだ。

 レスリングは兄貴に何らかの分野で勝ちたいと思って始めた。三井に進学して主将を努めた兄は、インターハイではベスト8が最高記録。“兄超え”は平川にとって楽な目標のはずだった。しかし、本番直前で兄が世界ジュニア3位と偉大躍進したことで、大きなプレッシャーとしてのしかかってしまったようだ。

 それでもこの4日間、団体、個人戦を通して平川の動きは安定していた。重たい腰で前へ前へと相手に圧力をかけ、相手がひるんだところでタックルを出す。これがうまい具合に次々と決まった。「平川が勝ったのは、“池松効果”と“兄貴効果”ですね。不器用で走れない選手でしたし、1年前までは相撲みたいなレスリングだったんですよ(笑)。それがこの1年で努力してチームで1、2番で走れるようになったんです」と平川の劇的な成長に目を細めるのは、森岡敬志監督。

 脚力が付き、池松先輩らの技術指導の相乗効果で、いつの間にか平川の生命線は“タックル”と言えるまで成長していた。次の目標は2週間後の全国高校グレコローマン選手権で優勝すること。兄の将来の夢はプロレスラーだが、兄より少し小柄の翔次の夢は警察官だ。強い男になるために平川翔次の進化は続いていく−。

(文・撮影=増渕由気子)


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