【特集】大橋監督は「本人が望むなら会社はバックアップする」と笹本の現役続行を支持【2008年8月13日】






 メダルが期待された男子グレコローマン60kg級の笹本睦が2回戦で敗退−。北京五輪レスリング競技第1日、笹本はもちろん、コーチ陣や関係者もがっくりと肩を落とした(左写真=ナザリアンに敗れた笹本)

 レスリング人生の集大成として臨んだことは誰もが周知の事実。それだけに笹本をバックアップしてきた関係者のショックも大きかった。因縁の相手、アルメン・ナザリアンン(ブルガリア)に対して笹本は第1ピリオドを奪取。日本協会の下田正二郎副会長(山梨学院大部長)が「その時点で勝ったと思ったよ」と話すように、誰もが因縁のライバルに引導を渡したと確信した。

 そこから元五輪王者の巻き返しが始まった。ALSOK総合警備保障の大橋正教監督(右下写真)は「第2ピリオドで守り切れなかったのが敗因だった」と分析した。

 この日は全体的に波乱の日だった。大橋監督や関係者が「今日行われた55kg級、60s級ともに、去年の世界選手権1〜3位のだれもが優勝できなかった。五輪にはやっぱり何かある」と口にし、あらためて勝負の怖さを感じた様子だ。

■決勝戦を見つめる笹本の眼差しは、勝負師の目

 笹本自身にとっては、アテネに続いて不完全燃焼の五輪となってしまったことだろう。しかし、「北京が最後」と追い込んで仕上げてきたものの、大会後に引退の言葉はなかった。リップサービスの気持ちも含まれているだろうが、2012年ロンドン五輪を目指すようなニュアンスの言葉も聞こえてきた。

 もしロンドン五輪を目指すとしたら、34歳で迎えることになる。ことし30歳とベテランの域に入ってきたが、国内では無敵の状態だ。大橋監督の「負けたけれども、(五輪チャンピオンと)五分に戦ったことは評価できる」という言葉どおり、笹本の力は世界のトップレベルで間違いない。その進退が注目されるところ。

 大橋監督は「本人次第。4年後といきなりは言えませんが、来年、さ来年、という形で続けてもいい。オリンピックでは勝てませんでしたが、世界2位、全日本で7連覇もしている選手ですから、選手の意思を尊重して、会社は笹本をバックアップしていきたい」と、現役続行を支持した。

 その笹本は敗者復活戦と3位決定戦、決勝戦が行われた午後の部の会場に姿を見せた。観客席の最上段から試合を見つめる眼差しは、勝負師の目。来年、“世界チャンピオン”という目標を設定し、さらに4度目の正直を狙って再びマットに立つことも十分に考えられる表情だった。

(文・撮影=増渕由気子)



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