「吉田は研究のあとがはっきり分かりました」…八田忠朗・米国コーチ語る【2008年8月20日】



 今年1月、教え子のマルシー・バンデュセンに打倒吉田を実現させた米国の八田忠朗コーチは「日本のレスリングはすばらしい。よく練習している」と、金2個を含む全階級でメダルを取った日本女子チームを称えた。

 吉田の連勝記録をストップさせたこと指していると思われるが、「いろいろお騒がせしました」と苦笑い。「でも、あれで全世界が(打倒吉田、打倒日本を目指して)燃えたはず。世界のレスリングが盛り上がったと思う」と振り返り、マットの上での壮絶な闘いを通じた国際交流を「オヤジ(日本レスリング生みの親の八田一朗氏)が望んでいたこと。喜んでいると思います」と、世界の祭典を総括した。

 約7ヵ月ぶりに見た吉田のファイトは「研究のあとがはっきり分かった」と言う。「バンデュセンにそれを上回る作戦を授けたのでは?」との問いに、「(バンデュセンが)2回戦で負けてしまってはね…」。初めての大舞台に動揺していたようで、「どんなに技があっても、精神力がなければ勝てません」と話した。

 世界のレベルがますます上がっていくことが予想される中で、日本がこれからも世界のトップを維持するには、「世界の選手を研究することが必要になってくると思います。日本の練習量はすばらしいものがありますから」と、豊富な練習量のほかのプラスαが必要になってくるという。米国については「技術もそうですが、精神面を鍛えていかなければなりません」と手厳しく評した。

 出生の地での五輪参加を終えた八田氏は、全米チームの指導はこれで終わりにする予定。職業の美術(高校の美術教師)を追求する一方、ジュニアや学生チームなど若いチームの指導に携わっていきたいそうだ。また日本チームの前に立ちはだかる可能性もあるわけで、母国への“挑戦”は続く−
(左写真:テリー・スタイナー監督とともに選手にアドバイスを送る八田氏=左)

(文・撮影=樋口郁夫)


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