【特集】「夢や信念を強く持てば、必ず実現する」…プロ格闘家・須藤元気さん(拓大OB)


     


 「意思というエネルギーが物質に変化することは科学的に証明されている。『オレは強くなる』と1000回思い込めば、本当に強くなれる。夢や信念を強く持てば、必ず実現する」。K−1などで活躍する格闘家、須藤元気(拓大レスリング部OB)さんが年末、母校・拓大の合宿に参加し、部員たちを前に熱弁をふるった。

 拓大は天皇杯全日本選手権後の12月25〜30日、2004年最後の合宿を行い、1年を締めくくったが、西口茂樹コーチの発案で、異種格闘技のトレーニングを日替わりで取り入れた。「どの格闘技にも共通する点がある。それらを経験させることも勉強になる」ということと、全日本選手権という大きな壁を乗り越えて、ともするとホッとする時期。いつもと同じ練習では、気持ちを盛り上げることも難しい。別の格闘技に接することでマンネリを避ける意味もあった。

 実施したのは空手、サンボ、ボクシング、総合格闘技。決して形だけの練習ではない。空手の練習では、突きをまともに受けて腹にあざをつくる選手がいれば、ボクシングの練習では見事にKOされた選手も。西口コーチが「レスリングの練習の時より目が輝いているよ」と苦笑いするほど部員は異分野の戦いを真剣に学んだ。

 総合の練習では、OBの須藤さんを招いた。須藤さんはプロの格闘家を目指して東京・関東一高からレスリングに取り組み、拓殖短大に進んで1996年JOCジュニアオリンピックで優勝。世界ジュニア選手権にも出場した実力者。「レスリングを続けてほしい」というコーチらの声もあったが、プロになる夢を貫徹し、米国へ渡ってビバリーヒルズ柔術クラブで柔術や総合格闘技をマスター。

 99年8月にパンクラスでデビューし、その後、リングス、UFCなどにも出場。02年から打撃格闘技であるK−1にも挑戦。昨年は総合でホイラー・グレイシーにKO勝ちするなど、総合・打撃を使いこなすプロ格闘技の第一人者。モデルやタレントに挑戦するなど芸能活動も並行してこなしている。

 練習では、関節技や絞め技などの総合の技術を次々と披露。不利な体勢と見えながら、次の瞬間には関節やけい動脈ががっちりと決め、タップ(ギブアップ)に追い込む総合の技に部員たちは目を丸くし、実地体験に挑んだ。

 須藤さんは「この道場で多くのことを学びました。今の自分があるのはレスリングのおかげです。練習もしっかりやりましたし、礼節や上下関係など、社会へ出ても必要なことも教えてもらいました」と、かつての修練の場を訪れ懐かしそう。

 練習の最後に部員に伝えたのが冒頭の言葉だ。志(こころざし)を大きく持ち、強い意思を持ち続けることで、その夢がかなうと強調。「自分がプロになると言った時、最初は笑われたが、それでもプロになる夢を捨てなかった。しゃべって行動して、それで夢が実現するんだ、という気持ちをもってプロでやっている。地球のすべての人から笑われ、バカと言われてもいいじゃないか。『オリンピックで金メダルを取るんだ』という強い信念を持ち、それを言葉にして出してみろ。その言葉が必ず行動になって現れる」と、自らの体験を交えて話した。

 何をやりたいか、どこへ行きたいか、という気持ちをしっかり持つことの重要性も訴えた。例えば、「ここから東京駅へ行く」という気持ちがあるからこそ、「どんなルートで行けばいいのか」という考えが湧くのであり、目的地が決まっていなければ進みようがないし、進んでも無駄になることが多い。

 それと同じことが人生も言える。「プロ」でも「オリンピック」でも、自分の行きたいところを明確に持つことで、どんな練習をどれだけやればいいのかという考えが湧く。自分の目標や夢をしっかり持ってほしいと訴えた。

 プロの厳しい世界で生きている選手だけに、その言葉には重みがあった。プロ選手のこうした厳しさを部員に伝えることができただけでも、拓大レスリング部にとって大きな収穫となったことだろう。同部と須藤さんの2005年の躍進を期待したい。


 ○…須藤さんは10月の試合で右足甲を痛め、大みそかの「Dynamite!!」は無念の欠場。しかし、それも順調に回復し、早ければ2月23日に東京・有明コロシアムで行われるK−1MAX(中量級)の日本トーナメントで復帰が予定されている。





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