【特集】北京五輪へ向けて「選手の甘えは絶対に許さない!」…栄和人

女子ヘッドコーチ         
栄 和 人(中京女大職)  


 2008年北京五輪へのスタートとなる年が始まりました。アテネ五輪での金メダル2個、全階級でメダル獲得という成績の喜びにひたり、支援してくださった方々への感謝・御礼の時期も終わり、北京五輪での全階級金メダル獲得という目標に向けて厳しい闘いを始めなければなりません。

 女子の強化の責任者として私が任命されたわけですが、一人の力ですべてができるとは思っていません。富山英明強化委員長をはじめ、土方政和強化副委員長、男子フリースタイルの佐藤満ヘッドコーチ、男子グレコローマンの伊藤広道ヘッドコーチとも連携を深め、協会全体としての底上げができるように努力することが、まず必要であると思っています。

 貧弱な土壌では植物が育たないように、貧弱な組織のもとでは強い選手が生まれることはありません。協会の力を借りて強化委員会が団結し、どの国にも負けないだけの組織をつくっていきたいと思います。

 もちろん、責任を回避するものではありません。女子の強化については私が責任をもって行いたいと思います。アテネ五輪は五輪種目になってからまだ日が浅く、他国が強化する期間が短く、スタート時から五輪種目になることを想定して練習に取り組んでいた日本にアドバンテージ(有利)があったことは確かです。北京五輪までには、他国も腰を落ち着けて練習を重ねてくるでしょう。それらに負けないだけの組織の強さと強化体制をつくり、必ずや北京五輪でも日の丸を揚げることをお約束します。

 選手の強さやレスリングの戦い方は日々変わっており、勝つための普遍の方程式などありません。常に世界の流れを見つめ、研究し、その上をいく練習方法を考えて実践していくことが必要となります。そのために、まず1月下旬に全日本チャンピオン4選手を含めた選抜チームがロシアのクラスノヤルスクへ向かい、ロシアのレスリングに接してきます。

 この大会は賞金マッチとして行われ、旧ソ連の強豪が多く参加する大会です。今年は米国からの参加も予定され、世界選手権以外の大会としては最高レベルの大会といってもいいかもしれません。坂本姉妹(真喜子=48kg級、日登美=51`級)、斉藤紀江(67kg級)ら五輪を逃した強豪は、あらためて世界の実力を知る大会になります。新ルールになって初めての大会であり、学ぶことは多いかと思います。

 ただ、アテネ五輪の代表選手は希望制とし、結局、全員が参加しないことになりました。五輪、ワールドカップ、全日本選手権と続き、4ヶ月の間に3度も心身を高めて疲れていますので、今回は休ませました。もちろん今回限りです。来年以降は必ず冬の遠征に参加させ、世界のレスリングを肌で感じさせます。チャンピオンの座に安住していては、あっという間に引き下ろされます。甘えは絶対に許しません。

 ジャパンクイーンズカップは3月25日。この大会でアジア選手権、ワールドカップ、世界選手権の代表あるいは代表候補が決まります。誰を代表にするかは、強化スタッフで話し合ってシステム決めますが、私個人の意見としては、全日本選手権のチャンピオンがクイーンズカップで優勝した場合は、その段階で世界選手権の代表に決めようと思います。

 ワールドカップとアジア選手権は日程が近く、人選に迷うところです(ワールドカップ=5月20〜21日・フランス、アジア選手権=5月28〜29日・中国)。前述の2大会に優勝し減量の少ない選手には両大会に出場してほしいという気持ちもあります。違う選手が優勝した場合は、一人をワールドカップ、もう一人をアジア選手権と分けることもあるかと思います。選手の意向も聞きながら決めることになります。

 いずれにせよ、世界選手権の代表選手には、最低でもどちらかの大会に出場させて世界を相手にした実戦練習を積み、そこでの経験や反省点をもって夏場の練習をこなし、10月の世界選手権に臨みたいと思います。目標は、もちろん全階級での金メダル獲得です。



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