【特集】相手の猛攻をしのいでの後半勝負があたる…51kg級・伊調千春


(撮影:矢吹建夫)


 同郷(青森)で、かつては何度も戦う間柄だった伊調千春と坂本日登美。2003年のこの大会以来2年ぶりとなった対戦は、伊調が坂本の猛攻を固い防御で守りながらチャンスをものにして流れをつかみ、2−0で勝った。大学進学後の99年以来、4連敗していた雪辱を果たすとともに、世界選手権出場の望みをつないだ。

 試合後、撮影していたカメラマンが「伊調の顔が写らないんだよ」と嘆いたほど、伊調は坂本の開始直後の猛攻に苦しめられ、顔を下に向けてしのぐのがやっとだった。だが、必死の思いでポイントを許さず、場外際に追い詰められても回りこみながら耐えて0−0。クリンチのコイントスででも負ける劣勢だったが、うまく坂本の手を切ることができ、このピリオドを先取。第2ピリオドは坂本の表情に焦りの色が浮かび、スタミナも切れてしまったようで、自らのペースへ持ち込むことができた。

 「ホッとしました。去年のこの大会、オリンピックがかかっていてガチガチになってしまって負けた。同じ失敗を繰り返さないように、と思った」。リラックスするにあたり、妹の馨が「リラックス、リラックス」と言ってくれたそうで、それも冷静に試合を進めることができた要因でもあるという。「(相手は)絶対にバテると思った。第1ピリオドはしのごうと思った」と、考えたとおりに試合を進めることができたようだ。

 アテネ五輪は坂本真喜子との戦い、今回は坂本日登美との日本代表争い。坂本姉妹との“抗争”が続くが、「ライバルがいてこそ自分の力も伸びる」と、姉妹をあげての闘いを歓迎。「日登美は世界を2度制している。自分はまだ1回。私の方が挑戦者。もう1度、(プレーオフで)挑ませてもらいます」と、6月に再度、坂本に“挑む”ことを宣言した。




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