【特集】魅せた伝統の力! “往年の霞ヶ浦”復活へ一直線





 全国高校選抜大会団体戦で、3回戦(三井戦)と準々決勝(光星学院戦)をともに4−3の勝利。3年連続のV15に暗雲が漂ったかに思えた霞ヶ浦だったが、続く準決勝(岐南工)と決勝(玉名工)を6−1で快勝。01年に春(全国高校選抜)夏(インターハイ)ともに優勝できず、特に選抜大会では3回戦敗退という苦難から完全に立ち直り、3年連続14度目の春夏制覇へ向けてのスタートを切った(写真右)

 大沢友博監督
(写真下)は自校と対戦校の戦力を比較し、三井と光星学院の4−3はある程度は予想していたことだったという。4階級は絶対に落とさない自信があったそうで、スコアから感じられるほどの危機感はなかったようだ。

 ただ、光星学院戦で50kg級の鈴木洋平が右肩を負傷。棄権を余儀なくされ、以後の試合で起用できなくなりそうなピンチはあった(結局、準決勝を休んで決勝に出場)。そのピンチを、1年生(新2年生)の入江和久が奮戦して岐南工との準決勝で勝ち、チームを勢いづけた。「(対戦相手の)増元も強い選手なんですよ」と大沢監督。控えにおいた選手が、いざという時に力を発揮する…。この層の厚さこそが霞ヶ浦の強さにほかなるまい。

 強さの秘密を問われた大沢監督は“伝統”を挙げ、「選手が、先輩がやってきたこと、勝つためにはどこまでやればいいかなどを見ている。自分たちの代で連覇を途切れさせたくない意地もあるでしょう」と続けた。V3を達成した現在、その思いはますます強くなるはずで、一時期、“常勝”の看板をおろさざるを得なかった霞ヶ浦だが、このままいけばインターハイ11連覇を達成した(1990〜2000年)頃の再現も考えられる(選抜大会は6連覇が2度)。他校にとっては全国制覇の壁がいっそう厚くなりそうだ。

 インターハイまでの課題は、今回落とした階級の強化だろう。5試合中3敗を喫した74kg級の野添泰寛は1年生(新2年生)であり、伸びしろは十分。2敗を喫した120kg級の渡辺文博はグレコローマンが強い選手であり、フリースタイルへの応用ができれば頼もしいポイントゲッターになれるはず。夏までの4か月で、さらに強いチームに変わる可能性は十分だ。

 だが一校独占の状態が、日本レスリング界のためになるとは思えない。準優勝の玉名工や、3−4と追いつめた三井、光星学院の奮起を期待したい。

(取材・文=樋口郁夫)


★霞ヶ浦の最近22年間の成績

年 度 選抜大会 インターハイ 優  勝  校
1984年 ベスト8 3 位 選抜・インターハイとも青森・光星学院
1985年 2 位 3 位 選抜・インターハイとも青森・光星学院
1986年 2 位 優 勝 選抜は青森・光星学院
1987年 2 位 優 勝 選抜は埼玉・埼玉栄
1988年 優 勝 優 勝   
1989年 優 勝 (不出場) インターハイは鹿児島・鹿児島商工
1990年 優 勝 優 勝   
1991年 優 勝 優 勝   
1992年 優 勝 優 勝   
1993年 優 勝 優 勝   
1994年 3 位 優 勝 選抜は北海道・岩見沢農
1995年 優 勝 優 勝   
1996年 優 勝 優 勝   
1997年 優 勝 優 勝   
1998年 優 勝 優 勝   
1999年 優 勝 優 勝   
2000年 優 勝 優 勝   
2001年 ベスト16 3 位 選抜・インターハイとも青森・八戸工大一
2002年 ベスト8 優 勝 選抜は静岡・沼津学園
2003年 優 勝 優 勝   
2004年 優 勝 優 勝     
2005年 優 勝        


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