【特集】「男子両スタイルと各7階級を守るため、IOCと闘います」…FILAマルティニティー会長



 五輪種目から男子1スタイルの削除か階級の削減を求められる可能性のあるレスリング。第3回加ト吉杯女子ワールドカップのため来日した国際レスリング連盟(FILA)のラファエル・マルティニティー会長(スイス)に、FILAが直面している問題について日本の報道陣が聞いた。(通訳:ターニャ古賀)

 ※参考記事 ⇒ 2002年8月30日 2002年9月3日 2003年2月22日 2003年6月30日 2003年7月15日


 Q:国際オリンピック委員会(IOC)から、男子の2スタイルのうちのどちらかを削除するように勧告されているが。

 
マルティニティ会長(以下、マ会長):IOCのプログラム委員会がそういった案を出しているのは確かだ。しかし、ジャック・ロゲIOC会長とは、レスリングには両スタイルが必要という認識で一致している。どちらかのスタイルを削ることは、100m走を片足で走るようなもの。フリースタイルのみ、あるいはグレコローマンのみをやっている国もある。片方のスタイルをなくすということは、それらの国にオリンピック出場の道を閉ざすことになってしまう。

 
Q:五輪で両スタイルは存在し続けるということか。

 
マ会長:2008年北京五輪までは今のままという確約をもらっている。北京の後、IOCがどう出てくるか分からない。国際レスリング連盟(FILA)内部での改革は必要かもしれないが、両スタイルを存続させ、女子を7階級にするための努力を続ける。

 
Q:両スタイルを残すのなら階級を減らせ、という決定がIOCでなされたら、どう対応するのか。

 
マ会長:戦います。レスリングは、すでに10階級から8階級へ、さらに7階級へと減らしている。これ以上の削減には応じられない。オリンピックのレスリング枠は360選手。これは世界選手権に出てくる選手数から300人も少なく、国で言えば約20か国が出場できなくなっている。減らすのなら、陸上とか種目の多い競技からにするべきだ。

 
Q:近年、柔道の方が世界的に普及している。9月に大阪で行われた世界柔道選手権は97か国が参加したが、ニューヨークでの世界レスリング選手権は70か国だった。

 マ会長:
フランスで行われた世界グレコローマン選手権への出場選手数を考えれば、普及ではレスリングの方が上と考えられる。国際柔道連盟は1か国3人分のエアチケットを出してでも出場国を増やそうとしている。FILAも、その必要があるかもしれない。ただ、先の世界陸上選手権(8月、フランス)でアフガニスタンの選手がパジャマのようなウエアで100mを20秒近くで走ったケ−スがあった。こうした国をも参加させて大きな大会にするか、世界のトップレベルの選手を集めた大会にするか、議論する必要がある。

 
Q:アテネ五輪で、イラクに対してワイルドカード(主催者推薦枠)を使う可能性を示唆していたが。

 
マ会長:考えている。イラクとアフガニスタンで五輪に出場を希望する競技というと、ともにレスリングという答だった。ワイルドカードは、世界大会やその後の五輪予選に出ながら資格を取れなかった国に対して与えられるが、そうでない国に対し、IOC、FILA、アテネ五輪組織委員会の同意で5枠(注:4枠が正しいと思われる)がある。イラクとアフガニスタンを考えている。戦争のためレスリングに取り組めなかった国を支援し、普及を手助けするのも私たちの役目だ。

 
Q:イスラム圏に対する女子の普及は?

 
マ会長:すでにチュニジア、エジプト、トルコなどでやっている。イランで取り組んでくれる日が来た時が、女子レスリングの本当の世界制覇となる。この前、イランの首相に「女性にレスリングをやらせてくれ」と頼んでみた。「考えてみます。将来は…」と答えてくれたが、具体的にいつ、という答はなかった。ただ、以前に比べるとイランの女子に対する感覚は変わっている。以前は女子と同じマットで試合はできないとして、全選手が棄権したこともあったが、今、そういったことはない。

 
Q:現在の試合方式についてはどうか。シード制がなく敗者復活戦もないので、強豪が同じブロックに入ってしまうと、上位へ行けないシステムだ。

 
マ会長:FILAとしての懸案事項です。規定でアテネ五輪まで変更することはできない。そのあと変更すると、今度は8年間変えられないことになっている。いろんな提案を十分に検討して決めたい。個人的には1日で終わるトーナメント方式としたい。




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