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【特集】“天敵”相手に、必殺のそり投げがさく裂!…120kg級・園田新(滋賀・日野)
【2011年8月20日】

(文=樋口郁夫)




 今年の全国高校生グレコローマン選手権の最後を飾る120kg級の決勝戦は、インターハイ120kg級を制した園田新(滋賀・日野=右写真)と96kg級を制した山本康稀(埼玉・花咲徳栄)の一騎打ちへ。園田が得意のそり投げを決めるなどして勝ち、王者決戦を制した。

 両者は同じ重量級の選手として中学時代にも闘ったことのある間柄。園田は2009年の全国中学生選手権では0−2(TF0-6=0:59,TF0-6=1:24)で完敗している。山本康稀だけでなく、弟の晋也(花咲徳栄)とも何度か闘い、やはり勝てなかった相手だという。今年のインターハイでは弟の晋也を準々決勝で破って優勝。今回は兄・康稀に雪辱。「弟に勝った時もうれしかったけど、今回はもっとうれしい」と表情を崩した。

 日本の重量級は、ともすると「動きがない」と評されるが、山本も巻き投げを仕掛けるなど積極的な攻撃を展開。次代をになう2人の攻撃し合う試合に、関係者からは惜しみない賞賛がおくられた。

■失敗の繰り返しで本物の必殺技に

 試合は、園田ががぶり返しを失敗して0−3とされるスタート。しかし、「四つに組んでのそり投げという得意技があるので、それを決めれば絶対に負けない」と言い聞かせて反撃。その必殺技を見事に決めて逆転
(左写真)。腹ばいになられてフォール決着はならかったが、試合の流れをつかみ、2−0で快勝した。

 第2ピリオドにはローリングも披露している。しかし「そり投げ以外、何もできないです」と言う。小学校の頃から四つに組んでのそり投げはよく使っていて、「よく自爆で負けていた」−。それが悔しく、とことん練習するようになった。失敗の繰り返しによって本物になってきたようだ。

 父・崇さんは日体大の重量級で活躍し、1987年世界エスポアール選手権にも出場した選手。小学校1年に時に日野にキッズ教室ができるというので、兄と弟を含めて行ったところ、崇さんの大学の先輩にあたる南敏文監督の「いい体しているな。崇、3人ともやらせろよ」の一言でレスリングをやることになったという。

 「無理に、というわけではないですよ。興味ありましたし」。レスリングを始めてみると、よく食べるようになり、身長は高くとも細かった体が、みるみるうちに大きくなった。小学校6年生の時には90kgはあったという。しかし「ケンカはしたことないです。気が小さくて、泣かされることが多かったです。体が大きいので我慢をしいられることもあって…」と、ガキ大将というわけではなかったようだ。

■今年12月の全日本選手権への出場も視野に

 今では高校生離れした体格と体力が大きな武器となっているが、外国へ行った時には、パワーで通じないことは十分に予想している。「今年は1月からインターハイの前まで、徹底的にウエートトレーニングをやりました」と、外国選手にも通じるパワーつくりに着手。

 今年の世界カデット選手権は、体重の問題などで辞退したものの、世界での闘いに備えた練習も手掛けている。今月末には韓国遠征を控えているので「まず韓国の重量級選手の強さを肌で感じてきたいです」と言う。
(右写真=ライバルを破りガッツポーズ)

 JOC杯カデット、インターハイに続いて3個目のタイトルを取り、今年の残る目標は10月の国体優勝だが、同時に12月の全日本選手権への出場も視野に入れている。というのも、昨年の国体で敗れた前川勝利(茨城・霞ヶ浦=現早大)と闘いたいからだ。

 「去年負けたけど、あの試合で自信がついたんです。その前川さんが全日本(選抜)王者になって。それなら、もう一回やってみたいなあ、と」。上を目指している選手は、強い選手を相手に自分の強さを試したくなるもの。両スタイルにわたって高校生最強を証明した園田の目は、早くも全日本王者へ向いている。

 日本の重量級に、前川勝利に続く期待の星が誕生するのも、そう遠い日のことではあるまい。



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