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【特集】棄権の同僚と天国の祖母に届けた初優勝…60kg級・望月芙早乃(東京・安部学院)
【2011年8月18日】

(文=樋口郁夫)




 全国高校女子選手権の60kg級は、昨年56kg級3位の望月芙早乃(ふさの=東京・安部学院高)が、決勝でクイーンズカップ・カデット・チャンピオンの栄希和(愛知・至学館)を破って優勝した。(右写真)

 静岡・清水一中時代は全国大会5位が最高でメダルには手が届かなかった選手。高校に進んでからも、3位や2位はあったが優勝とは無縁だった。最終学年の最高の大会でやっと手にした栄光。「何か…。実感が湧かないんです」と、夢心地の表情で最初の一言が出てきた。

 同じ3年生の矢後佑華選手(49kg級)がけがで出場できなくなり、「絶対に優勝するね」と約束して臨んだ大会だった。1、2回戦はフォール勝ち。準決勝も1−0、3−0とポイントを許さない素晴らしい内容。ところが決勝のマットでは、緊張のせいか「体がうまく動かなかった」という。

■どんなきつい試合になっても気持ちが折れないように

 そこを「気持ちで負けない。絶対に取り切るんだ」と自分自身に言い聞かせ、最後はクリンチの攻撃権を生かして2−1で振り切った。以前に勝っていたことも、強気になれた要因かもしれないという。ただ、クリンチにもつれての勝利であって
(左写真)差をつけての優勝ではないこともあり、「まだ頑張らなければなりません」と気を引き締めることも忘れなかった。

 矢後選手との約束もさることながら、昨年の夏、祖母をなくし、「絶対に優勝するね」と誓ったことも、この1年間の頑張り、そして今回の優勝につながっているという。「最高の一周忌を迎えられました。気持ちを天国に届けられました」と感無量の様子。

 卒業後は環太平洋大への進学を希望しており、さらに上を目指す予定。「大学でも日本一を目指したい。そのためには上半身のパワーをつけたい。それ以上に、どんなきつい試合になっても、気持ちが折れないようにすること」と言う。初めて経験した優勝の味は、さらなる実力アップにつながっていくことだろう。



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