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【特集】東日本学生リーグ戦展望(1)…V2目指す早大【2011年5月12日】

(文=増渕由気子)




 今年の東日本学生リーグ戦は5月17日から20日、東京・駒沢体育館で開催される。ここ2年間続いた早大と拓大の一騎打ちの構図は今年も続くのだろうか。それとも、重量級に定評がある日大、高校エリートが数多く加入した山梨学院大など、他大学が「早拓時代」に待ったをかけるのか―。

 初回は、昨年優勝の早大を紹介する。(各選手の成績は、全日本選抜選手権を除いて昨年のもの)

■前評判は「早大2連覇」の呼び声高し

 昨年の大会で62年ぶりに優勝の栄華を勝ち取った早大
(右写真=胴上げされる伊江邦男監督)は、今年も優勝候補ナンバーワンだ。学生トップレベルで活躍した4年生が抜けるものの、“タレント軍団”の輝きは昨年以上。全日本大学王者の山口剛主将(84kg級)と4月の全日本選抜選手権準優勝の石田智嗣(60kg級)の4年生コンビを筆頭に、エース級の選手が勢ぞろいする。

 66kg級学生王者の田中幸太郎(66kg級)、74kg級学生2位の北村公平(74kg級)、84kg級JOC杯ジュニア王者の殿村幸城(96kg級)のメンバーは今年からフル稼働が予想される。

 新人にはタイトルを持った選手がずらりと顔をそろえる。高校MVPの前川勝利(120kg級)を筆頭に、高校三冠王の保坂健(66kg級)、インターハイ&国体王者の桑原諒(60kg級)などフレッシュなメンバーの出番にも期待したい。特に前川は、4月の全日本選抜選手権で全日本王者の新庄寛和(自衛隊)からローリングを奪って優勝。プレーオフでは新庄の意地に屈したが、早大入学直後に「全日本のホープ」に躍り出た。

 優勝の栄誉はあくまでグレコローマンだが、“超高校級”から“全日本級”にランクアップした前川の存在は、他大学にとって脅威だろう。早大は2009・10年は正規の120kg級選手抜きで闘い、60kg級の選手を74kg級で使うなど、奇をてらったさい配が多かった。前川の加入により、今年は正攻法で「黄金メンバー」を組む可能性も高い。
(左写真:山口主将=右=とスーパールーキーの前川)

■山口主将の方針は昨年どおり「4年がまず勝つ」

 早大V2の使命をまとめるのは山口主将だ。「今年のJOCも3人が優勝して、全日本選抜でも優勝者1名、2位が石田で、僕が3位。そこそこ調子は上がってきています」と順調な仕上がりをアピールした。山口主将の本来の階級は84kg級だが、「1年生(前川)に最後を任せるのは大変ですから、自分が120kg級に出ることも考えてます」と、今回も幅広い階級での活躍をにおわせた。

 今年のモットーは昨年と同じく「4年生がまず勝つこと」。ただし、今年の4年は山口と石田の2人のみで、2人が勝つだけでは星が足りない。「3年生が一緒に(4年生と同じ役割を果たせるように)頑張ってほしい」と期待を寄せた。

 優勝への手ごたえは十分にある。「各階級にそれぞれエースになれるような選手が育ってきて、頼もしいです」と笑顔。3年生の田中、2年生の北村、花山和寛(74kg級)の名をを挙げて「不安はありません」と太鼓判を押した。「先輩が築き上げた伝統を引きついで、歴史を作っていきます。全試合7−0で勝ちにいきます」とV2宣言を行った。
(右写真=2連覇を目指して練習する早大)

 だが、山口主将には一抹の不安も残る。メンバーの調子ではなく学校生活だ。「震災の影響で大学が5月6日開講になったんです…」。4月は授業がなく、部活漬けの異例な毎日を送った1年生は、一気に生活のリズムが変わる。本来なら、5月には新しい環境に慣れ、落ち着いた状態でリーグ戦に臨めるが、今年は状況が違う。イレギュラーな大学スケジュールに惑わされずにチームが一致団結できるかが課題になりそうだ。

■キーマンは55kg級の西洸大

 全日本選抜王者やジュニア王者がゴロゴロいるため、唯一穴と見られてしまうのが55kg級だ。2009年全日本学生王者の藤元洋平と入れ替わりに入学したのが、西洸大(2年)だ。高校は50kg級で活躍したため、ルーキーイヤーの昨年は、レギュラーを柏木健太(3年)が60kg級から落として参戦。その作戦が見事に当たって優勝した。

 さすがに、今年は柏木の60kg級エントリーが濃厚で、西がレギュラーでマットにあがることになりそうだ。西は「早大の歴代の55kg級が強いので、そのプレッシャーの中でやらなくては」と気合を入れる。2年生というハンデも「55kg級は団体戦では流れを作る大事な階級。メンタル面で押しつぶされないように全勝したい」と意気込みを語った。



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