【特集】“オダ・スペシャル”爆発! 初の全日本遠征で銀メダル…フリースタイル60kg級・小田裕之(国士舘大)【2010年1月31日】

(文・撮影=樋口郁夫)


■小田裕之の試合結果
 1回戦   BYE
 2回戦  ○[2−1(3-0,0-2,3-0)]Batuduun(モンゴル)
 3回戦  ○[2−1(1-0=2:04,0-1,1-0=2:30)]Magomed(ベラルーシ)
 4回戦  ○[2−1(0-1=2:02,1-0,@-1)]Banzarak(ロシア)
 準決勝 ○[2−1(1-0=2:08,0-1=2:00,1-0=2:05)]Saritov(ロシア)
 決  勝 ●[0−2(0-3、TF1-7=1:56)]Vasil Fedoryshyn(ウクライナ)

 全日本チームの遠征に初参加のフリースタイル60kg級全日本チャンピオン、小田裕之(国士舘大)が、ロシア最高レベルの国際大会「ヤリギン国際大会」で銀メダルを獲得した(右写真)。地元の選手相手に接戦をものにした試合もあり、勝負強さを見せてくれての2位。「ラッキーな面がありました」と謙そんするものの、運だけで勝ち抜ける大会ではない。初出場に臆する様子もない度胸のよさとともに、今後の飛躍が期待される内容だった。

 決勝の相手のバシル・フェドロシン(ウクライナ)は北京五輪の銀メダリスト。五輪で優勝したマブレット・バティロフ(ロシア)に一本背負いを決めるなど、一筋縄ではいかない相手だ。小田もDVD研究で一本背負いを持っていることは承知済み。にもかかわらず、「警戒しすぎた」という面もあったが、見事にかかってしまった。

 現段階では、ひとつ上の実力を持っていたのは間違いないだろう。よくやった2位と言えるが、決勝の前に日本にいる国士舘大の和田貴広コーチと電話で話し、「2位じゃダメだ。出るからには勝て」と言われたとのこと。「やはり2位じゃダメですね」と欲の深いところを見せた。

 しかし「試合数をこなせたことはよかった」と言う。和田コーチからは、日本を発つ前に「アジア、ヨーロッパなど多くの国のレスリングを経験してこい」と言われたそうで、その指示は果たすことができた。経験のための試合出場なのだから、遠征の目的は十分に果たしたと言えるだろう。

■審判の不可解判定との闘いも経験

 経験といえば、審判との闘いでもいい経験することができた。準決勝のロシア戦では、明らかに相手のクリンチの組み方がおかしかったにもかかわらず、小田がフライングの警告を取られる結果に。今後も地元びいき判定や、技術の未熟な審判の判定に直面することもあるだろう。世界で勝つには、それらを乗り越えていくだけの強さが必要ということを知ったことは、大きな収穫のはずだ。

 和田コーチの教えということでは、初戦で直伝の“ワダ・スペシャル”を見事にかけてみせたことも特筆だ(左写真)。和田コーチのあと、使い手のいなかった技。手足の長い和田コーチなればこそできる技と思われたが、この難易度の高い技を実戦の場でやってのけたところに、小田の非凡なセンスが感じられる。

 2試合目以降はかけるチャンスもなかったが、あまりかけすぎても研究されてしまうので、今大会は1回でよかったかもしれない。実戦での経験を少しずつ積み重ねていくことで、一流選手相手にもかかる技に成長してくれることが望まれる。

 「ワダ・スペシャルじゃなく、オダ・スペシャルと呼ばれるようになればいいね」との問いに、少し微笑んだ小田。若手成長株の世界での飛躍が、いま、間違いなく始まった。


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