【特集】鹿島学園が激戦区の軽量級で2階級優勝
【2010年1月31日】

文・撮影=増渕由気子


鹿島学園が2階級制覇

 正田杯関東高校選抜大会の個人戦が1月31日、神奈川・逗子アリーナで行われた。昨年、50kg級〜74kg級までの5階級を霞ヶ浦(茨城)が独占したが、ことしは大荒れ。50kg級では、鹿島学園(茨城)の1年生・阿部宏隆が、昨年8月に行われた奈良インターハイで1年生チャンピオンになった山崎達哉(自由ヶ丘学園)を決勝で2−1で破って優勝。

 55kg級でも、同じく鹿島学園の1年生・黒沢翔が第2シードから勝ち上がって優勝。部員が全階級そろわず、学校対抗戦では1回戦で太田市立商(群馬)に敗退し全国選抜選手権の切符を逃したが、その悔しさを見事に個人戦で晴らした格好だ。(左から黒沢、高野監督、阿部)

 鹿島学園は、不滅の金字塔を打ち立て続ける霞ヶ浦と同県の茨城県。そこに、去年、ちびっ子から実力を持つ阿部と黒沢が入学。阿部にいたっては、全国中学生チャンピオンの肩書きを持つエリート中のエリートだ。高野謙二監督は、ピッグな新入生に期待はしていたという。

 ただ、50kg級のインターハイチャンピオンの山崎には、練習試合でもテクニカルフォールでバラバラにされていたそうだ。「練習のスパーリングでは五分。持ち前の集中力さえ出せれば」と感じた高野監督は、試合前に作戦を授けた。「丁寧にやりなさい」。

 その言葉に反応した阿部は、すさまじい集中力を見せた。第2ピリオドであわやフォールというピンチを回避すると、第3ピリオドはラストポイント差の2−2で勝利。「技をかけた瞬間、自分が勝ったと思った」と勝負を決めると、力強くガッツポーズを見せた。

 今回の勝利は、姉の阿部千波(愛知・至学館高)に発奮された部分もあった。12月の天皇杯、姉は世界選手権代表の坂本真喜子(自衛隊)を追い詰めるほどにいい試合をした。「僕も強くなりたい」。兄弟の切磋琢磨が今回の勝利につながったようだ。

 一方の黒沢の当初の目標は、「全国大会に行くこと」だった。ただ、「ベスト8に入れば、負ける気はしなかった」と鬼門の2回戦を勝ち抜くと、持ち前のスピードと柔軟性を生かしたレスリングで勝ちあがった。決勝戦は埼玉・花咲徳栄の杉山雄介。スタイル的に似たもの同士の決戦だった。グラウンドにもつれると、どちらも持ち前の柔らかさとバランスのよさで、終始攻防が入れ替わったが、その戦いを制したのは黒沢だった。

 昨年優勝ゼロから、あの霞ヶ浦と同じ2階級を制した鹿島学園。「全国選抜に団体戦が出られないのが惜しかった」と悔しがる高野監督だったが、その表情は終始緩みっぱなし。鹿島学園の2人が、関東1位という肩書きを持って3月に全国選抜デビューを果たす。