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【特集】立命館が18度目の優勝! 初めて伊藤敦監督の体が宙を舞った【2010年12月6日】

(文・撮影=樋口郁夫)



 西日本学生レスリングの今年最後の大会、西日本学生秋季リーグ戦は春の覇者・立命館大が予選リーグ3試合と決勝の中京学院大戦を危なげなく勝ち抜き、2シーズン連続18度目の優勝を遂げた(右写真)。春秋制覇は2年ぶり7度目。部員は19人と決して多くないものの、西日本の王者の実力を見せつけた。

 これまで17度の優勝と違うこと−。それは優勝後、マットの上で胴上げが行われたこと。これまでは伊藤敦監督の「西日本で勝ったくらいで胴上げなんて…」という方針のもと、優勝しても胴上げが行われることがなかった。

 今夏、選手に「やりたいか?」と聞いたところ、「やりたい」との答えだったので、「秋季に優勝したら」と胴上げ解禁を“ご褒美”とした。選手はその条件をきちんと果たし、優勝後、胴上げがスタート。真っ先に指名された伊藤監督は「キャプテンが先だろ」などと言いながら、リクエストをかわし続けた。しかし、選手、副部長、コーチと終わり、最後に引っ張り出されて宙に舞った。

 「意外に気持ちいいものですね」。初めての胴上げに、試合中もクールな表情を崩さない顔に、少し笑みが浮かんだ。「選手に『喜んではいけない』というプレッシャーを与えてしまっていたのかな? 解禁? ダメなんて言っていなかったんですけど…。やりたければやっていいですよ。でも、私はもういいけど」。来年からも歓喜の胴上げが見られるか
(左写真=役員室に入った伊藤監督にラブコールを送る選手)

■最近の最多優勝の伝統が、選手を奮い立たせる!

 大会を振り返り、「実績のある選手はいない。戦力的には落ちている」と分析する。勝つためにやったことは、選手を固定すること。団体戦では選手を上の階級に起用したりし、相手の意表をついて闘う作戦も時として重要な要素となる。そうしたことを一切せずに階級を固定。選手に責任感を持たせたという。

 「相手の攻撃を真正面から受ける横綱相撲ですね」という声に、「いやあ、そんなことはないですよ」と照れ、「いつも挑戦者。最後の1秒まで攻める気持ちを忘れないようにした」と言う。ただ「優勝回数が多いので、『優勝しないといけない』という気持ちは他チームより強いと思う。その気持ちが大きいと思う」と、最近12年間23シーズンで17度優勝の伝統の力を認めた。

 団体戦では、個人戦以上にセコンド席から大声で選手にアドバイスが送られるのが普通。しかし伊藤監督は興奮してアドバイスを送ることはなく、福川敦副部長、鈴木秀和コーチも極めて冷静だ。「監督が冷静でなかったら、選手は焦りますから」という信念からの行動。また、「指導陣の言っていることがバラバラだったら選手が迷う」との理由もある。こうした指導理念も、常勝チームをつくり上げた原動力なのだろう。

 主将としてチームを引っ張ってきた脇本恭平選手は「みんな実力を発揮できてよかった」とほっとした表情。自身はひざのじん帯を切ってしまって3年生の春から約1年間、練習ができなかったという。その間に主将に推され、「悩んだこともあった」という。その苦労を乗り越え、最後の年に春秋制覇を達成できてうれしさもひとしお
(右写真=マット上で闘志を見せる脇本主将)

 初めて経験した胴上げでは、監督を胴上げした時に思わず涙が出そうになったという。「みんなで監督を胴上げしようと誓い合って頑張ってきたのですから」。また、自身が胴上げされた時は、ここまでの苦労が脳裏を駆け巡ったという。

 「優勝 → 胴上げ」という新たな目標のもと、立命館大の黄金時代はいつまで続くか。



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