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【特集】神奈川大から銀メダリストが2人! 120kg級は“ボールの色”で負けた【2010年10月16日】

(文=池田安佑美)



 全日本大学グレコローマン選手権120s級は拓大の谷田昇大が8月の全日本学生選手権(インカレ)に続いて優勝。神奈川大の入江泰久が惜敗で2位になった。大会初日に行われた55s級でも、神奈川大の選手が2位に入った。4年生の柴田秀平が決勝まで駒を進めた。

 吉本収監督は、大学対抗得点で昨年の4位から6位に順位を落としたことを「悔しい」と話したが、銀メダル2個にまずまずの表情だ
(右写真=左から吉本監督、柴田、入江。峯村コーチ)

 「あー、悔しい!」―。試合を終えて、峯村亮コーチにかけよった入江は、こう言ってうなだれた。それもそのはず。優勝候補最右翼のインカレ王者、谷田との決勝戦は、互いにテクニカルポイントなしで、第3ピリオド、ボールピックアップの末のクリンチで勝負がついたからだ。

■ピックアップのボールの色が違っていれば、優勝を手にできた!?

 入江の専門はフリースタイル96s級。谷田とは体のサイズが一回りほど違う。昨年の全日本大学選手権(フリースタイル)で2位、グレコローマンは秋の新人戦で優勝するなど成績を残しているが、「今季はJOC杯などでも表彰台を逃していました」と、昨年より負けこんでいた。そのため、専門外のグレコローマンでも優勝を狙って、ここ1ヶ月ほど、トルコ修行から一時帰国中の峯村コーチとともに必死に練習を積んできた。

 青コーナーだった入江は、第1ピリオドのグラウンドは防御に回って谷田の攻撃をしのいだ(1−0で勝ち)。これで「グラウンドは守れる」と確信。第2ピリオドはグラウンドの攻撃ができずに落としたが、すぐさま最終ピリオドの作戦を組み立てた。本来力が上の谷田とスタンド勝負はリスクが大きいと判断。「グランド勝負にしよう」と、スタンドで無理な勝負に出なかった
(左写真=谷田と闘う入江)

 スタンドでの1分30秒を終わって0−0。ここまでは作戦通り。グラウンド戦でディフェンスになれば、守り切れる自信があったというが、レフェリーのピックアップしたボールは無常にも青の入江。攻撃側となってしまった。必死にローリングを仕掛けたが、谷田にクラッチを組ませてもらえずに試合終了。優勝を逃した。

 峯村コーチは「本当はスタンドで1点取ってほしかった。そうすれば、その時点で勝ちなのに」と指摘。だが、谷田のスタンドでの圧力を、入江本人が肌で感じて取り、そのうえで考えた作戦も、勝つためには一理ある。峯村コーチは「本人は相当、悔しがっている。11月の大学選手権は本職のフリースタイル。そこで頑張ってもらいたい」とエールを送った。

 1階級上の強豪チームと互角に戦えた入江。「筋トレをして力をつけます! もっと練習します」と、神奈川大としては2007年にグレコローマンで達成した峯村以来の大学王者を目指すことを宣言した。

■55s級の柴田秀平は「11月には本職のフリーで意地見せます」

 柴田秀平は峯村コーチの階級であるグレコローマン55s級での健闘。峯村コーチは9月の千葉国体で優勝したばかり。これまでに学生二冠王、全日本選手権2位、国際大会優勝の実績もある。同級は神奈川大にとって“聖域”。柴田は「(峯村コーチは)僕の憧れです」と照れくさそうに話した。

 3年の入江と違って柴田は今年が最終学年だが、12月の全日本選手権につながる入賞がまだなかった。インカレを終えて、「もう最後だし、勝つしかないんだ」と気合を入れて大会に臨んだことが功を奏した。だが、2位では納得できない。

 「このままだと、全日本選手権はグレコローマンで出場することになってしまう…。僕の得意技はタックル。フリースタイルでの権利を取りたいです」。残された“全日本選手権予選”は11月の全日本大学選手権のみ。ここで権利を獲得するしかない
(右写真=2位に終わった柴田は、来月、勝負をかける)

 柴田は今季、歯がゆい夏場を過ごした。インカレで優勝したのは、昨年のJOC杯ジュニアオリンピック2回戦で破っている半田守(専大2年)。大学選手権には、千葉国体で3位に入った森下史崇(日体大1年)も参戦してくるかもしれない。若手の台頭に「ここらで、僕が(若手の勢いを)止めないと。4年の意地を見せたいです」とキッパリ言い放った。

 全日本大学選手権で優勝を飾り、12月の全日本選手権で、学生最後の試合を飾れるか―。



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