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【特集】2年の鈴木が殊勲賞、4年の岡が勝負を決めた【2010年9月19日】

(文=増渕由気子)



 全日本学生王座決定戦の決勝戦で拓大が早大を4−3で下し、4年ぶり2度目の優勝を決めた。須藤元気監督体制になってからはこの大会初の戴冠で、同監督は「本当に言葉が出ない!」と、体全体で優勝に浸った(右写真=優勝を決めた岡にかけよった須藤監督=左端)

 2008年11月に監督に就任した須藤監督は、昨年はこの大会を除く3大会(東日本学生リーグ戦、全日本大学グレコローマン選手権、全日本大学選手権)で拓大を優勝に導いた。これで4つの団体戦のすべてで「優勝」に名を刻んだ。今は残る全日本大学グレコローマン選手権、全日本大学選手権をも制し、「今年も三冠達成を目指します」と宣言した。

 優勝を決めたのは120s級の岡太一。8月全日本学生選手権ではグレコローマンで84s級、フリースタイルでは96s級で優勝。唯一の両スタイル制覇を成し遂げてMVPを獲得した選手だ。これまでは、力があるにも関わらず緊張で本番に弱いタイプだったが、周囲が「インカレで一皮むけた」と口をそろえるように、生まれ変わった岡は早大戦で堂々の大将(120s級)に起用された。

 実際に、チームスコア3−3で出番が回ったが、岡は非常に落ち着いており、第1ピリオドであっさりとフォールを奪って快勝。大会一番のヒーローとなり、チームで須藤監督より先に胴上げされた
(左写真=須藤監督と岡)

 「やっとチームに恩返しができた」。号泣し、絞りながらコメントを出した岡。「レスリングを辞めたい、フリースタイルが分からないと申し出たとき、西口先生が『じゃぁ、今から一緒にフリースタイルをやろう』と1週間、休みの日もつきっきりで指導してくれた」と成長秘話を話した。

 来月の全日本大学グレコローマン選手権は、岡の専門であるグレコローマンであり優勝候補の筆頭だ。精神的に強くなった岡にとって、学生四冠王ももはや夢ではない。

■60s級の鈴木が早大の柱、松本を破る殊勲

 拓大にとって55s級、60s級で2連勝したことが早大撃破のカギになったことは間違いない。特に、60s級の鈴木康寛が、早大のキャプテン松本を倒したことは裏MVPと言える活躍だ。その鈴木の気持ちを盛り上げたのは、先日、日本で行われた柔道の世界選手権だった。

 鈴木は中学時代、柔道で全国中学生王者になった実力者。「柔道男子66s級で世界チャンピオンになった森下純平(筑波大)は、中学時代に柔道を通じて知り合いました。実は今でもメル友です」と、柔道界の新星と交流があった。同い年の活躍に鼓舞され、「自分もやればできる」と今大会に照準を合わせてきた。

 「いつも、松本さんの組み立てにやられていた」と試合巧者の松本の術中にはまっていた鈴木だったが、「攻めパターンを確立させた」と常に攻撃的でいることで、松本から先手を取ることに成功。2−0とストレート勝ちを収めて、チームに流れを引き寄せた
(右写真)

 高校時代、田中幸太郎(京都・京都八幡高=現早大)の陰に隠れて無冠だった鈴木が、今では立派に拓大の看板選手に成長した。「そろそろ、海外でも闘いたい」と鈴木。学生タイトルはもちろん、10月1〜4日の国体、12月の全日本選手権での活躍も見えてきた。



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