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【総括】「メダル狙いではなく、金メダルを狙う」…佐藤満・男子強化委員長【2010年9月13日】

(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)




 世界選手権としては、1995年以来のメダル2個を獲得した日本男子。着実な前進を見せる一方で、フリースタイルでは、メダルを取った55kg級の稲葉泰弘(警視庁)以外は、84kg級と96kg級で1勝ずつを挙げただけで2勝6敗という成績。試合内容の是非は別として、厳しい現実に直面したのも事実だ。

 フリースタイル66kg級では、2007世界&2008年北京五輪王者が初戦敗退、五輪2位が2回戦敗退、昨年の世界チャンピオンや3位の米満が敗者復活戦に回れないなどハイレベルの選手がそろっている。この階級に限らないだろうが、ある年にメダルを取っても、それが必ずしも翌年につながるものではない現実も突きつけられた
(右写真=初戦敗退の米満とコーチ陣)

 最低でもメダル3個を目標にしてモスクワに乗り込んだ佐藤満・強化委員長(専大教)は「世界の闘いは厳しい。『メダルが狙える』では、メダルは取れない。『金メダルが狙える』というレベルにまでいって、やっとメダルが取れる」と振り返った。両スタイルとも軽量3階級に関しては、それは可能だと話し、金メダル獲得を目標としたさらなる実力アップを口にした。

 稲葉の準決勝(対アゼルバイジャン)や米満の初戦(対キューバ)、グレコローマン96kg級の北村克哉(ドン・キホーテ)の初戦(戦ドイツ)など、勝っていながらラスト1、2秒で逆転された試合もあった。「ともに守りに入った。意識を変えていきたい」と厳しく言い放った。

■見合ってカウンターの選手ではなく、アタックできる選手の養成

 また、フリースタイル60kg級の小田裕之(国士舘大)、同84kg級の松本篤史(ALSOK)のように、極度のプレッシャーに襲われたのか、国内で見せている動きができなかった選手もいた。佐藤委員長は、世界選手権の闘いはそれほど厳しいものであり、経験が必要とする一方、昨年、初出場だった60kg級の前田翔吾の例を挙げ、「アタックできる選手は上位へいける」ときっぱり。稲葉も、問題のシーン以外はポイントを取りにいっており、それが初出場であるにもかかわらずメダル獲得につながったと分析。見合ってカウンターで勝つのではなく、攻撃する選手の養成を口にした。

 重量級は、96kg級の磯川孝生(徳山大職)が「自分の持ち味を出した」と評価。全体として、押されても押し負けない体力ができたと、着実な前進があったこと認めた。「これまでの練習が間違っていなかったことを感じてくれたと思う」と話した
(左写真=男子では日の丸が2度揚がった今大会)

 目標に到達できなかった現実に、「これが来年でなくてよかった」と佐藤委員長。ロンドン五輪まで2年あり、立て直す時間が十分にあるという。また、五輪翌年の昨年の世界選手権は強豪の何人かが欠場していたが、今年はマットに戻ってくるべき選手が戻ってきて、各国の戦力が鮮明になった。

 「55kg級のアゼルバイジャンは、これから各国に研究される。これ以上伸びることはない」など本格的な情報戦もスタート。「JISS(国立スポーツ科学センター)が全試合ビデオを撮ってくれている。すぐにDVDに焼き、各選手に渡したい」と、汗をかく以外の部分での強化も力を入れていきたいという。

 新たな課題を見つけ。ロンドン五輪への道をどう突き進むか。メダル数を増やした日本男子の今後に期待したい。



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