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【特集】あがることなく闘えた世界初戦…男子フリースタイル120kg級・下中隆広(国士舘大ク)【2010年9月13日】

(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)




 最終日、日曜日ということもあって客の集まりもいい日に、日本選手として最初にマットに上がった男子フリースタイル120kg級の下中隆広(国士舘大ク)は、2008年北京五輪3位・今年のアジア大会王者のマリド・ムタリモフ(カザフスタン)相手にフォール負け。敗者復活戦に回ることなく大会を終えた。

 第1・2ピリオドとも中盤までは押し負けることもなく、0−0で試合は進んだ。両ピリオドとも後半に突入する頃に仕掛けられ、ポイントを取られた(第2ピリオドはフォールへ)。第1ピリオドの足首へのタックルは、研究していたので「予想していた」というが、防ぐことはできなかった。

 第2ピリオドは正面からのタックルで、これは想定外の攻撃
(右写真)。「こっちのペースをつかみかけたけど、相手のペースにはまってしまった」と、五輪3位&アジア王者の実力の深さを実感した様子だ。「(相手は)こちらが攻撃に費やす力の何分の一かでポイントを取っている」と、その実力を表現。「先に攻撃のない闘いでは勝てませんね」とも。

■負傷からはい上がり、これからが勝負の時

 初めての世界選手権のマットでは、あがってしまって「何が何だか分からなくなった」と口にする選手も少なくない。しかし下中は、いきなり強豪が相手でということで完全に開き直ることができ、「踏ん切りがついて、特にプレッシャーを感じることがなかった」という。

 確かに試合は落ち着きはあり、足が地についていないといった状況ではなかった。勝負度胸は満点。残念ながら5月のアジア選手権(初戦敗退)に続いて結果は出なかったが、負傷で大学時代をほぼ棒に振り、そこからはい上がって今年初めて世界に出たことを考えれば、今年から結果を求めるのは酷だろう。

 勝負はこれから。アジアと世界で闘い、その経験が生かされるのは今後だ。やっと「ホップ」が終わった時であり、「ステップ」「ジャンプ」としていくのはこれからだ。



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