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【特集】過呼吸を起こす激闘の末に銅メダル…女子59kg級・正田絢子(京都・網野高教)【2010年9月10日】

(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)




 5度目の世界一はならなかったが、女子59kg級の正田絢子(京都・網野高教)は、銅メダルという最低限度求められている成績を残し、安堵の表情を浮かべた(右写真=3位決定戦に勝った正田)

 「金がよかった。悔しさがある」と話し、時おり涙を浮かべつつも、「試合ができるのは幸せ。メダルがあるのとないのでは、大きく違うし」と、銅メダルを日本へ持ち帰られる喜びを口にした。

 2年ぶりの世界選手権。過去5度も世界選手権に出場している正田であっても、最初はどうしようもない緊張感に襲われ、浮き足だってしまっていたという。「久しぶりに心臓の音が聞こえてきました」とのこと。昨年出場した山名慧選手が初戦敗退だったことなども脳裏をよぎり、不安は消えなかったという。

 加えて、前日、網野の教え子でもある51kg級の堀内優選手が金メダルを逃し、「自分がやらなければ」というプレッシャーもあった。そんな極度の緊張が、やや動きを悪くし、初戦(2回戦)から第3ピリオドへもつれる苦戦へとつながったのだろうか。

 3回戦も第1ピリオドを大苦戦するという内容。準決勝のバトチェチェグ・ソロンゾンボルド(モンゴル)にフルピリオドの末に敗れたあとは、過呼吸を起こし、セコンドに両肩を支えながらウォーミングアップ場へ戻らねばならなかったほど
(左写真)。心身ともにエネルギーを出しつくした状態で、2年ぶりの世界選手権は予想以上に過酷な場だった。

■階級アップの選手が多かったが、「上の階級の選手がの方が強い」−

 しかし、メダルへの思いが気持ちの切り替えにつながった。3位決定戦の相手は、55kg級で北京五輪や昨年の世界選手権で銅メダルを取っているトーニャ・バービク(カナダ)。バービックに限らず、この大会は55kg級から上げてくる強豪が多かった。たとえ1階級下であっても、世界でメダルを取った選手というのは嫌なものだという。

 それでも2008年の世界選手権決勝で、55kg級で世界のメダルを取っていたナタリア・ゴルツ(ロシア)を破ったことを思い出し、「絶対に上の階級の選手の方が強い」という気持ちを持ってマットに上がった。

 その結果が、第2ピリオド、0−1で終盤に入るという劣勢ながら、最後に1点を取って逆転勝ちにつながったのだろう。メダルの色は金色ではなかったが、ボロボロになりながらつかみ取った銅メダルは、賞賛に値する銅メダルであったことは言うまでもない。

 「自分の力のなさを感じた。反省することばかりだ」とも口にした正田。その言葉は、今後も世界を目指して闘い続ける意思表示以外の何ものでもない。闘いは、まだ続く−。



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