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【特集】初出場で5位入賞も、嗚咽で「申し訳ない」…男子グレコローマン74kg級・金久保武大(マイスポーツ)【2010年9月9日】

(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)




 負傷欠場の鶴巻宰(自衛隊)に代わって出場した男子グレコローマン74kg級の金久保武大(マイスポーツ)は、2006年アジア大会王者を破るなど健闘したものの、3位決定戦で2007年アジア王者のダニアル・コボノフ(キルギス)に敗れ、メダルに手が届かなかった(左写真=3位決定戦の第3ピリオドのラスト十数秒、必死に攻める金久保)

 初出場で、出場が決まったのが8月下旬と準備期間が短かった。それを考えると、十分に合格点の与えられる成績と思われるが、試合後の金久保は「申し訳ない」とうつむき、涙を隠すかのようにタオルに顔をうずめた。

■試合感覚15分もあった1日6試合でも、「ばてることはなかった」

 代役として出させてもらっただけに、「日本の74kg級は強い」というイメージをつくりたかったという。前日に60kg級の松本隆太郎が銀メダルを取っており、「続きたかった。出してくれた人に本当に申し訳ない」と、嗚咽(おえつ)まじりの声を絞り出し、何度もタオルを目頭へ持っていった。

 3位決定戦は、「スタンドで先にポイントを取る」と心に誓ってマットに上がった。しかし、組みつかれ、そり投げで痛恨の1失点
(右写真)。第2ピリオドのグラウンドの攻撃では、クロスボディロックからの攻撃を失敗して立たれてしまった。

 この大会はクロスボディロックとノーマルパーテールと使い分けていただけに、どちらで攻めるか迷いがあったとも思われたが、「ありません」と選択に悔いはなし。「自分のスタイルが甘いからなんでしょうね(逃げられた)」と説明した。

 1日6試合の激闘だった。準々決勝と準決勝との間隔が15分くらいしかなかったり、第1セッションの3時間半で5試合をやるなどは世界選手権ならではのこと。しかし、「全日本の合宿でスタミナ練習をやってきたので、ばてたという感じはしなかった」という。

■海外遠征を重ね、「外国選手との闘い方が分かってきた」

 1日6試合の課題を挙げるとしたら、闘いの幅を広げること。「多くの人が(自分の)試合を見て研究してくる。ひとつ、ふたつの攻撃パターンでは足りないことを感じた」と言う
(左写真=準決勝で昨年の欧州王者、アルメニアのアルセン・ジュルファラキャンと闘う金久保)

 昨年冬の欧州遠征と、今年6月からのグルジア、アゼルバイジャン、ポーランドの遠征で、「やっと、日本選手とは違う外国選手との闘い方が分かってきた」と言う。「海外遠征を多くさせてもらって感謝したい」と話すとともに、「だからこそ勝たなければならなかった。これからの闘いに生かすこといで恩返ししたい」と続け、次回以降の闘いでの健闘を誓った。

 インタビューの最後に、報道陣にも「申し訳ありませんでした。この闘いが無駄にならないよう、次回につなげたいと思います」と頭を下げた金久保。初出場で入賞という成績にも悔しさいっぱいの姿に、来年以降の大きな飛躍を感じた。



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