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【特集】昨年の世界2位に通じず…男子グレコローマン55kg級・長谷川恒平(福一漁業)【2010年9月7日】

(文=車屋綾香、撮影=矢吹建夫)




 新生全日本チームの先陣を切って2010年世界選手権のマットへ上がった日本男子のエース、グレコローマン55kg級の長谷川恒平(福一漁業)は、3回戦敗退(2試合目)という形で2度目の出場の幕を閉じた。

 2回戦(初戦)のアクバー・クジエフ(ウズベキスタン)戦は落ち着いた試合運びで勝ち
(右写真=クジエフを攻める長谷川)、3回戦へと駒を進めた。「勝負だと思っていました」と言うように、相手は昨年の世界選手権2位の実績を持つロマン・アモヤン(アルメニア)。北京五輪3位の実績をも持つ実力派だ。長谷川は2007年8月、ピトラシンスキ国際大会(ポーランド)で闘って敗れ、世界の広さを知った相手でもある。

 アモヤン戦では、第1ピリオドのスタンド・ポジションからバック投げなどで圧倒的に攻められ、「焦った」と振り返る。第2ピリオドは気持ちを切り替えて腕取りを狙いにいくも、アモヤンの左右を狙ってくる腕取りに勝ることはできず、「攻め手が埋まってしまった」と試合を振り返った。

 長谷川本人が「スタンドでポイントを取られることはそうそうない」と口にし、グレコローマンの伊藤広道監督(自衛隊)も「長谷川がスタンドでポイントを取られたことは、何年かぶりだと思う」と言うように、スタンドではいつも安定した試合運びを見せる長谷川だが、今回はその通りにはいかなかった。

■世界からのマークをどう乗り越えるか?

 メダルを獲得するためには敗者復活戦進出の道が残されていた。長谷川に勝ったアモヤンの決勝進出を願ったが、アモヤンは準決勝で昨年の世界選手権決勝の相手でもあるハミド・スーリアン(イラン)に敗れ、長谷川のメダル獲得への道は断たれた。

 今回の世界選手権は2年後のロンドン五輪へ向けての一つのステップに過ぎない。敗者復活戦への道が断たれたあと、ウォーミングアップ会場ではコーチ陣と試合を振り返り、反省や課題を探求している頼もしい長谷川の姿があった。

 「オリンピックまではあと2年ありますが、(予選などが始まるので)1年しかないようなもので、残された時間は少ないです。課題がたくさんあります」と話した。そういった意識や姿勢が、長谷川をさらに成長させてくれるに違いない
(左写真=アモヤンのバック投げを受ける長谷川)

 初出場となった昨年の世界選手権は、ゴールデンGP決勝大会を含めて国際大会4大会連続優勝という勲章を持って臨み、強豪ロシアを破るなどして快進撃を見せた。しかし、こういった実績を残すことによって世界からマークされるようになって研究され、勝っていくことがより困難になっていく。

 この“壁”を乗り越えて、また世界で活躍してくれる長谷川の姿に期待したい。



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