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【特集】北京五輪銀メダリストと真っ向勝負! …男子グレコローマン96kg級・北村克哉(ドン・キホーテ)【2010年9月7日】

(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)




 男子グレコローマン96kg級の北村克哉(ドン・キホーテ)が、納得できない判定で北京五輪2位からの金星を逃した(右写真)。ミルコ・エングリッヒ(ドイツ)との試合は、お互い固い守りでピリオド・スコアは1−1(0-1,1-0)へ。勝負の第3ピリオドも、スタンド戦は0−0。レフェリーのボールピックアップによってグラウンドの防御となった北村は、必死に守り、30秒をしのいだ。

 途中、相手の手をがっちりと握ってこらえ、レフェリーから「オープン」との注意を受けてしまったが、すぐに両手を広げた防御姿勢をとり、そのまま時間切れとなった。ジャッジも北村の行為を正当な防御として認め、北村の勝ちとした。

 ところがチェアマンが2審判の判定に異議を唱え、本部席のジュリーに判定を預けた(この行為はルール通り)。ジュリーは、北村のアクションが防御のみを目的として相手の体の一部をロックする反則行為とみなして「警告」。相手に1点が入って、エングリッヒの勝ちとなってしまった。

 こうして、北村の北京五輪銀メダリスト撃破という殊勲は幻となってしまった。これだけの強豪と互角に闘えたことだけでも大きな前進と思えるが、試合直後の北村は「勝たなければダメです」ときっぱり。不可解な判定への悔しさで充満していた。オープンは「絶対にした」と言う。

 相手が北京五輪銀メダリストだということは知らなかったそうだ。その事実を聞かされると、「そうだったんですか。以前ならボコボコにやられていたかも」と話し、自らの着実な前進を感じた様子。「たまたまでしょう。相性もありますから」とも話したが、外国選手の攻撃をしのげるようになったことは認めた。

■飛躍の基盤ができ、次は必殺技の養成

 昨年も、初戦で元世界王者相手に善戦した。結果だけからすれば、2年連続初戦敗退ということになるが、対戦相手の実力などを考えると、世界の上位へ食い込む基盤は十分にできていることが分かる。また、「以前は試合が始まると興奮してセコンドの声が全く聞こえなかった」というのが、「今回はしっかり聞こえた。冷静に闘えるようになった」と話し、経験を積んでの精神的な成長もある。今後につながる内容だった
(左写真=ガッツレンチを狙う北村)

 「世界でやっていける手ごたえは?」という問いには、「全力でやっているのに、うまくいかない」と、答になっていない言葉が返ってきたが、数年前に比べると明らかに盛り上がった肩や胸の筋肉を見る限り、来年こそは重量級強化の成果を結果として出してくれる可能性は十分。

 グレコローマンの伊藤広道監督(自衛隊)は「押す力やパーテールポジションの防御力などは確実にレベルアップした」と言う。北村が、同級で2007年に世界5位に入った加藤賢三選手の再現を果たすには、「これという武器が必要。加藤には首投げがあった。北村は押しこんでから崩すなど、確実な攻撃力がほしい」と注文していた。



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