▲一覧ページへ戻る



【特集】世界選手権へかける(19)…男子フリースタイル74kg級・長島和幸(クリナップ)【2010年9月1日】

(文=布施鋼治)



 国内では敵なし。しかし、国際大会ではなかなか結果が出ない−。男子フリースタイル74kg級で2度目の世界選手権へ出場する長島和幸(クリナップ=左写真)は、そんな自分が歯がゆくて仕方がない。

 「試合結果を見てもらえれば一目瞭然だけど、国際大会は一昨年のアジア選手権(韓国)での3位が最高。他の大会では実績を残せていない。現実問題として、世界の壁があると認識しています」

■国内で大きな壁(小幡邦彦)を破ったあと、世界で再び高い壁に遭遇!

 世界の壁を具体的にいうと? 「細かいことをいうと、組んだ瞬間の圧力ですね。外国人特有の技術や動きにも壁を感じます。でも、少しずつではあるけど国際試合に慣れてきたので、自分の実力を発揮できるようになってきた気がします。レスリングという競技は、総合的なものが最終的に結果として現れるじゃないですか。自分の場合、それがまだ勝利に結びついていない」

 長島の前には、かつて国内にも大きな壁があった。1999年から2005年にかけ、74kg級(01年までは76kg級)で国内最強の名をほしいままにした小幡邦彦(2004年アテネ五輪代表)だ。小幡に最初に土をつけたのは、2006年度全日本選手権での萱森浩輝(新潟・新潟県央工高教)だが、長島も翌07年の全日本選抜選手権で2−0で勝つことができた
(右写真)

 「小幡さんは目標といいますか、勝てない存在でした。彼に勝利することが大きなターニングポイントだったかもしれない。初勝利をあげるまで20回くらい負けているはず。それでも、『いつかは勝つんだ』という気持ちでやっていたので、打倒小幡を果たした時はうれしかったです。どんなに頑張っても、(目標としていた対戦相手に)勝てない選手もいますからね」。

 しかし、一難去ってまた一難。日本代表にステップアップすると、今度は“世界の壁”という違う壁にぶち当たってしまった。壁の違いを訊くと、長島は「どうなんですかね」と首をひねった。「一概に比較することはできない。小幡さんは特定の人物だけど、世界は(選手が多くて)ばく然としていることですかね。ただ、自分が負け続けているという意味では一緒かもしれない」

 悩む日も多いが、目標はあくまで世界。長嶋は日々の努力を怠らない。「〇△国の選手はこういった技が得意であるとか、技術的な分析をノートにつけて研究しています。結果というものは、それなりのプロセスがあってこそ出るもの。相手の分析や技術強化は継続的にやり続けることが重要でしょう」

■1勝の積み重ねが頂点へー。今年は「まず1勝」が目標

 昨年の世界選手権は初戦キリル・テルジエフ(ブルガリア)に第1ピリオドを取ったものの、1−2と逆転負け
(左写真)。31選手が出場した中で21位という成績だった。今回はまず1回戦突破が目標だ。

 「その積み重ねによって、やがて頂点に到達する。やっぱり一戦一戦が大事。来年の世界選手権はオリンピックの選考に直接関わってくるので、今回から実績を残しておかないとまずいという思いもあります」。リスクの大きい動きはできるだけ避け、カウンター狙いでポイントを重ねる。それが長島の基本的なファイトスタイル。今回も“長嶋流”を貫く方針だ。

 「相手に攻撃させ、そのスキをうかがって反撃するのが僕の闘い方ですからね。そういう展開になるように、前半からいかにチャンスを盗むかが課題になってくるでしょう」

 モスクワで世界という壁のどこまで登れるか。長島の視線は2年先のロンドン五輪を見据えている。


 長島和幸(ながしま・かずゆき)=クリナップ、2年ぶり2度目の出場
 1981年9月25日、群馬県生まれ、28歳。太田倶楽部出身。群馬・館林高〜早大卒。高校時代の99年に双子の兄・正彦とともに四冠(全国高校選抜大会、インターハイ、全国高校生グレコローマン選手権、国体)を制覇。早大へ進み、00年にJOC杯ジュニア選手権76kg級で優勝し、世界ジュニア選手権へ出場。翌01年もJOC杯に勝ち、世界ジュニア選手権は6位入賞。同年、全日本学生王者へ。
 02年は学生二冠を制し、世界学生選手権で6位。04年は世界学生選手権で銅メダルを獲得。06・07年に全日本王者に輝いているが、世界選手権と北京五輪の出場は逃した。08年全日本選手権で3連覇を達成。09年に世界選手権に初出場し、全日本選手権でも優勝。175cm



◎長島和幸の最近の国際大会成績

 《2010年》
 
【7月:ゴールデンGP決勝大会(アゼルバイジャン)】=21選手出場
2回戦 ●[0−2(0-1,1-2)]Gamid Dzhalilov(ロシア)
1回戦  BYE

 
【5月:アジア選手権(インド)】7位(14選手出場)
2回戦 ●[1−2(0-3,2-1,3-4)]M. Mendsaihan(モンゴル)
1回戦 ○[2−0(2-0,6-1)]Azamat Sufiev(タジギスタン)

 【3月:メドベジ国際大会(ベラルーシ)】
1回戦 ●[0−2(1-@,0-4)]Seifadoin Osmanov(カザフスタン)

 
【1月:ヤリギン国際大会(ロシア)】=25選手出場
2回戦 ●[0−2(1-2,1-3)]Variev(ロシア)
1回戦  BYE

 《2009年》
 【9月:世界選手権(デンマーク)】
21位(31選手出場)
1回戦 ●[1−2(3-1,0-2,0-2)]Kiril Terziev(ブルガリア)

 【5月:アジア選手権(タイ)】5位(13選手出場)
3決戦  ●[0−2(3-4,1-3)]Kim Jin-I(韓国)
準決勝 ●[0−2(0-2,1-3)]Abdulkhakim Shapiyev(カザフスタン)
2回戦  ○[フォール、1P(F8-0)]W.S.D.S, Fernando(スリランカ)
1回戦   BYE

 【2月:ダン・コロフ国際大会(ブルガリア)】5位(14選手出場)
3決戦  ●[0−2(TF0-7=1:56,3-3)]Ivan Deliverski(ブルガリア)
準決勝 ●[0−2(0−3,0−1)]Krystian Brzozowski(ポーランド)
2回戦  ○[2−0(3-0=2:03,1-0)]萱森浩輝(新潟・新潟県央工高教)
1回戦  ○[2−0(1-1,TF6-0=1:03)]Mohamed Zakaria(エジプト)

 
【2月:ヤシャ・ドク国際大会(トルコ)】=36選手出場
2回戦 ●[0−2(2-3,0-3)]Batuhan Demircin(トルコ)
1回戦  BYE

 《2008年》
 【4月:五輪予選第1戦(スイス)】
28位(29選手出場)
1回戦 ●[0−2(0-1=2:04,0-7=1:24)]Alexandru Burca(モルドバ)

 【3月:アジア選手権(韓国)】3位(11選手出場)
3決戦  ○[2−1(2-1,0-1,CL-4)]Abdulkhakim Shapiyev(カザフスタン)
敗復戦 ○[2−0(2-1,6-4)]Bazarbayev Abdurauf(ウズベキスタン)
2回戦  ●[0−2(0-1,0-1=2:05]Cho Byung Kwan(゙炳官=韓国)
1回戦  ○[フォール、2P1:16(4-0,4-0)]Ramze Salah Almarafi(ヨルダン)

 《2007年》
 
【11月:NYACオープン国際大会(米国)】9位(17選手出場)
敗復戦 ●[0−2(0-2,2-3)]Trent Paulson(米国)
敗復戦 ○[不戦勝]Shamil Batirov(ロシア)
敗復戦 ○[2−1(4-1,0-4,7-0)]James Allen(米国)
2回戦  ●[0−2(0-1,0-2)]Travis Paulson(米国)
1回戦   BYE
 
 
【5月:アジア選手権(キルギス)】5位(10選手出場)
3決戦  ●[0−2(0-1=2:04,1-2)]Lee Sang-Kyu(韓国)
準決勝 ●[0−2(2-3,0-1=2:03)]Wu Zuian(中国)
2回戦  ○[フォール、1P0:46(F5-0)]Wanna Sitthichai(タイ)
1回戦  BYE

 
【2月:ヤシャ・ドク国際大会(トルコ)】
1回戦 ●[0−2(3-4,1-2)]Yusuf Kose(トルコ)



  ▲一覧ページへ戻る