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【特集】階級変更も磐石の王者ぶりを発揮! 早大・60s級石田智嗣、66s級田中幸太郎【2010年8月31日】

(文・撮影=増渕由気子)
 


 学生レスリング界の早大勢の好調ぶりは今年も変わらず−。全日本学生選手権の男子フリースタイルで、5階級で決勝に進出し、60s級の石田智嗣と66s級の田中幸太郎が頂点に立った(右写真=左が石田、右が田中)。この2人、昨年までは石田が66s級、田中が60s級の選手だった。

 田中は高校2年生の時(2007年)の55s級の高校三冠王者。わずか3年で2階級も上で闘うことになった。石田は骨太で骨格が大きく、リーグ戦では74s級にエントリーするほど体幹の強さを持つ。田中と違って、すでに66s級で学生王者になっているだけに、階級変更に対して疑問の声も少なくなかった。

 そんな雑音を消し去るように、両選手とも決勝では快勝。石田は松本桂(早大)との同門対決に圧勝し、田中は日大の岩永翔吾に第1ピリオドでフォール勝ちした。

■「クリンチの石田」の汚名を返上 超攻撃スタイルに変貌にした石田

 石田はルーキー時代から早大の66s級レギュラーとして活躍し、2年生で学生王者になった。6月の全日本選抜選手権では、今年の世界代表の小田裕之に勝利。軽量級で最もディフェンス能力が高いといわれる選手になった。だが、石田の得点能力は決して高くはない。小田への勝利はクリンチ戦で勝ったもの。昨年の新潟国体では、金渕清文(青森)に2ピリオドともクリンチで落として準優勝だった。こんな試合ばかりを繰り返すため、「クリンチの石田」と言われてしまうほど、延長戦へ突入する確率はダントツだった。

 石田は「そう言われるのはイヤでしたね」と、今大会に向けて攻撃力を一新。新しいタックル系の技を身につけて臨んだ。「2つの技が3つになっただけで、こんなに攻撃しやすくなるなんて」と、面白いように攻撃が決まってクリンチは一度もなかった。

 課題をひとつ克服した石田は、次のステップに踏み出す。次の目標を問うと、「12月の全日本選手権優勝」と即答。超攻撃的なスタイルに変貌した石田が天下を本格的に狙い出した。

■世界ジュニアで銀、そして学生王者 66s級になじんできた田中幸太郎

 田中は、米国史上最高のレスラーとファイトスタイルが似ており、高校時代から“和製ジョン・スミス”と有名だった。大学2年生で学生王者になった。生命線のローシングルタックルに加えて、組み手で崩して、パワーを使わずに得点する能力も高くなった。

 昨年の秋、満を持して66s級に階級変更したが、全日本選手権の出場権を取りにいった東日本学生秋季新人戦では、小山内大輝(日大)に敗退。計画通りにものごとは進まなかった。半年の充電期間を経て4月のJOC杯ジュニアオリンピックの66s級で優勝。7月の世界ジュニア選手権(ハンガリー)では、「各国に特有のくせがあった」と、海外の洗礼も受けたが、銀メダルと結果を出した。今大会は66kg級での初めて出場にもかかわらず、堂々の第1シード。勝つ前から王者の風格が十分にあった。

 狙うは学生二冠王者と行きたいところだが、田中には試練がある。「11月の内閣(全日本大学選手権)に出るには、まず部内戦で勝たないと」。60s級で優勝した石田の視線はすでに全日本にある。大会の1ヶ月前にある全日本大学選手権では、減量のない66s級に出場する可能性もあるという。

 「石田先輩には、練習でなかなかポイントが取れない」。同時に階級変更をしたことから、直接のライバル関係になったことはないが、今後、石田といつ同じ階級になってもおかしくない。この壁を超えることが、田中が学生二冠王者に大きく近づく近道だ。



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