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【特集】専大から4年ぶりに2人の王者誕生…半田守(55kg級)鈴木聖二(84kg級)【2010年8月30日】

(文・撮影=増渕由気子)



 日本協会の男子強化委員長の佐藤満氏がコーチを務める専大からは、2人の学生王者が誕生した。55s級の半田守と84s級で主将の鈴木聖仁(右写真)、ともに初優勝。専大から2人が学生王者となるのは、2006年に稲葉泰弘(55kg級)と荒木田進謙(120kg級)以来。

■シルバーコレクター返上の鈴木聖二

 今大会、もっとも役者がそろった階級は84s級だっただろう。昨年の国体王者にも輝いた天野雅之(中大)が第1シード、第2シードは京都・網野高時代の2005・06年2年連続四冠王と頭抜けた成績を持ち、6月の全日本選抜選手権2位の永田裕城(日大)、昨年の大学王者で早大重量級のエース、山口剛が第3シード。そして鈴木が第4シード。準決勝はこの4人が順調に勝ち上がっての対決だった。

 鈴木は、高校時代からずっと永田の陰に隠れたシルバーコレクターだった。大学に入ると、天野や地元・岐阜の後輩、山口に成績を先にこされ、番手だった。最終学年で主将になったが、7月に事件が起こる。

 部員の練習態度が指導陣の怒りを買って、コーチ陣が1ヶ月間、指導から手を引いてしまった。インカレ前で最も大事なときに起こったアクシデント。崩壊したチームを先頭に立ってまとめなければいけないのは、主将の鈴木自信だった。

 「あの時期のチームは怒られて当然のことをしていました。それから、何度もミーティングを開くようにして、なんとかまとまりは取り戻せました。僕は主将ですから、この事件があって、一層『優勝しなくては』という気持ちが強くなったんです」。

 雨降って地かたまる―。そこから専大の雰囲気は一気に改善。重軽量級問わず、集中した練習を積んできた。準決勝の天野に、決勝の山口。ともに、鈴木が昨年、ここ一番の時に負けている相手だ。全日本大学選手権の決勝戦では、山口相手に終盤までリードを奪っていながら、逆転負け。そのときの反省を生かし、今大会は最後まで自分の構えをくずさなかった。

 組むと強い山口と必要以上に接近戦をせず、自分の間合いになれば、得意の鋭いタックルを繰り出す―。決勝は鮮やかな片足タックルを決めて快勝。「やっと、やっと勝てた。とくにく、今はうれしいです」。鈴木がシルバーコレクターを返上し、念願のチャンピオンの称号を手にした瞬間だった。

■「僕は史上最弱のチャンピオン」。今後も進化を誓った半田守

 日本のお家芸となりつつある55s級は、専大の半田守
(左写真)が大学2年で初優勝を飾った。佐藤強化委員長が「コツコツまじめなタイプ」と練習態度に合格点を与えるほどだったが、今春の練習中に階段で転倒してまさかの戦線離脱。JOC杯ジュニアオリンピックなど肝心な大会を欠場せざるを得ない状況だった。

 新人戦でも同門の荻原健汰に負けて優勝できず、心機一転、インカレに照準を合わせてきた。組み合わせを見ると、第1シードの須藤学(日大)と準決勝で当たる組み合わせ。「ここがヤマだな」。

 須藤が計量失格したことで「優勝」の二文字がいっそう現実的に。矢後匡平(日大)との決勝戦では第1ピリオドに失点したが、まったく焦らなかった。「僕は瞬発力がないんです。スタミナしかないんです」。じりじりと尻上がりに調子を上げる半田に対し、どんどん息を上げる矢後。「相手がバテてくるのが分かった」と、後半、常に前に出ていたのは半田だった。

 矢後のスタミナが切れた第3ピリオドに、タックルで突破口を開いて2−1で優勝。日本の新たな伝統をつくるべき55s級の学生チャンピオンになった。だが、半田はおごりを見せない。今大会は日体大が出場停止処分の状況。その中には、昨年、全日本王者に勝った選手など、強豪がたくさんいる。

 「おそらく、史上最弱の学生チャンピオンだと思います」と半田。このチャンピオンの名前におぼれず、本当の勝負はこれからと位置づけた。



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