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【特集】屋比久保監督の想いが叶った! …インターハイで浦添工が沖縄県勢初のベスト4【2010年8月11日】

(文・撮影=池田安佑美)



 8月2〜5日に行われた沖縄インターハイで、地元沖縄勢は、学校対抗戦で浦添工が県勢初となるベスト4に進出。個人戦でも浦添工の96s級・志喜屋正明が準優勝、84s級で与那覇竜太が3位に入る大健闘を見せた。 

 沖縄インターハイのために沖縄を強くする―。浦添工の屋比久保監督
(右写真)は、6年前からこの大会で沖縄勢を優勝させるために、すべてをかけて臨んで来た。キッズ教室を立ち上げて小中高の一貫教育に着手。個人戦3位の与那覇は、昨年の全国中学生選手権で優勝し、年間MVPにも選ばれた選手。6年目にして全国で闘える選手が育ってきた。

 昨年の奈良インターハイ学校対抗戦で、浦添工は初戦敗退。だが冬の間に力をつけ、今年3月の全国高校選抜大会ではベスト8に食い込み、6月の九州大会では島原(長崎)を破って初優勝と、インターハイへ向けて尻上がりに調子を上げてきた。

■王者・霞ヶ浦に敗れて、悔し涙!

 屋比久監督は「生徒たちには『インターハイまであと何年だよ』と、常にこれを目標にさせてやってきた」と振り返る。リハーサル大会にもなった九州大会を制した浦添工の生徒たちは、全員が「優勝」の二文字を本気で狙っていた。

 その真骨頂だったのが、学校対抗戦準決勝の霞ヶ浦(茨城)戦の66s級・宮城辰司だ。霞ヶ浦の主将・井手倫太郎に強烈なローリングでストレート勝ちを収めたが
(左写真)、ガッツポーズも見せず、涼しい顔で勝ち名乗りを受けた。今年の霞ヶ浦は準々決勝までにチームで4敗を喫したが、そのいずれの選手も、「王者・霞ヶ浦から1勝をもぎ取った」とばかりに、優勝したかのように派手に喜んだ。

 浦添工の意識が高かったことだといえるだろう。敗れはしたが、120s級に出場した志喜屋が、今年高校生に無敗の前川勝利をタックルから持ち上げるなどして、何度も見せ場を作った。

 王者・霞ヶ浦と浦添工は初顔合わせ。屋比久監督の「夢」でもあったこの初対決は、1−6と完敗だった。優勝を阻まれた選手たちは、試合後に号泣した。与那覇が「日本一練習してきたから」と話すように、全員が優勝できずに悔し涙を流した。屋比久監督は「オレたちがやってきたことは間違ってない。結果的には3位かもしれないが、ここは最高の舞台だ。胸を張って3位のメダルをもらって来い」と励ました
(右写真=悔し涙の選手に、「沖縄県勢初のベスト4を誇りに」と励ます屋比久監督)

■実った県全体での強化、優勝はなくとも「100点満点」!

 この1年で浦添工は急成長を遂げた。印象的だったのは、全員が型にはまったレスリングをしないこと。「練習相手も少ないし、内地(本州)に電車やバスで遠征に行くこともできない」という問題点を改善するために取った方法は、沖縄県全体での強化。

 沖縄には、屋比久監督をはじめ、八重山の具志堅太一監督(日体大卒)などレスリング経験のある顧問が10名ほどいる。具志堅監督が「練習相手がいないから、先生たちは自分の持っている技をすべて教えます。選手は、その中から自分にあった技を使うようになる」と話すように、学校の壁を超えて指導をしてきた
(左写真=120kg級の志喜屋は、前川勝利をタックルから持ち上げてポイントを奪った)

 また、パターン練習も多く取り組んできたという。「リードしている場合、残り何秒で負けている場合、それぞれ何を今するべきなのか。決して焦らず、何をするべきなのか考えることが大切だと指導してきた」(屋比久監督)。

 一番、場面の適応能力が高かったのは、66s級の宮城だ。スタイルはタックルで切り込み、ローリングで決めるタイプだが、足を取られたときは、すぐさまレッグホールドやタックル返しで、逆にポイントを奪う。個人戦の準々決勝の第1ピリオドでも、0−3と負けていたが、ラスト数秒で3点投げを決めて逆転するなど、試合の組み立てが非常にうまかった。これも、場面練習の成果が出たのだろう。

 屋比久監督は「団体、個人ともに優勝はできませんでしたが、生徒たちはよくやりました。私は100点をあげたいです」と満点の評価。「インターハイ後も、これまで同様に強化を続けていきます」と、優勝の二文字をこれからも本気で追いかけることを誓った。

 個人戦で表彰台にあがった志喜屋は2年、与那覇は1年生。浦添工レスリングはインターハイを終えて、第二のスタートを切った。



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