(文・撮影=池田安佑美)
【特集】あと1ピリオド! 秋田商、王者に迫るも3年ぶりの優勝まで一歩届かず【2010年8月4日】
(文・撮影=池田安佑美)
全国高校総体(インターハイ)学校対抗戦の決勝戦は、3連覇を狙う霞ヶ浦(茨城)と3年ぶりの優勝を目指す秋田商(秋田)の顔合わせになった。結果は3−4で秋田商は一歩及ばず。
だが、試合後に「久々に見ごたえがある決勝戦だった」との声が自然に起こるほど、120s級まで勝負がもつれた名勝負に、秋田商にも惜しみない拍手が送られた。
横山秀和監督(1996年アトランタ・2004年アテネ量五輪代表)が「3年ぶりに絶対優勝するんだという気持ちで取り組んできた。日本一練習してきたし、いい手ごたえはありました」と話すように、その自信が、そのまま試合にも表れた。
ハイライトは準決勝の飛龍(静岡)戦。準々決勝で120s級の斎藤拳斗がタックルを受けた際の着地に失敗。足首をねんざし、準決勝ではドクターストップで欠場。控え選手はおらず、6人で優勝候補2番手の飛龍と対戦することになった。
■120kg級のアクシデント欠場でもあきらめなかった横山秀和監督
だが、横山監督の「120s級が欠場しても優勝をあきらめたりはしなかった」という気持ちが、選手の最高のパフォーマンスを引き出したのだろう。松田健悟主将が全国高校選抜大会(センバツ)66s級2位の川村健太をストレートで破って2−2とすると、そこから3連勝して4−3で飛龍を撃破した。
■全国高校選抜大会準決勝 | |||||
霞ヶ浦 | ○[5−2]● | 秋田商 | |||
50 | 小宮佑介 | ○ | 2−0 | ● | 佐々木峻介 |
55 | 朝比奈健人 | ○ | 2−1 | ● | 伊藤 拓 |
60 | 古谷和樹 | ○ | 2−0 | ● | 桑原章嘉 |
66 | 井出倫太郎 | ● | 0−2 | ○ | 松田健悟 |
74 | 坂本悠太 | ○ | 2−0 | ● | 殿村和城 |
84 | 松野祐也 | ● | フォール | ○ | 桜庭正義 |
120 | 前川勝利 | ○ | フォール | ● | 斎藤拳斗 |
決勝のオーダー表は、斎藤の棄権以外は3月のセンバツとまったく同じ。松田と桜庭の2勝は計算できる。あと2つどこで勝つかが問題だったが、120s級がいないことで、軽量級2人の気持ちが鼓舞された。50s級の佐々木峻介、60s級の伊藤拓が立ち上がりの霞ヶ浦をたたいて2連勝。
問題だったあと2勝を簡単に奪って見せた。66s級の松田健悟主将は「キャプテンだから負けられない」と、霞ヶ浦・井出倫太郎主将との主将対決を制して3勝目。先に王手をかけたのは、秋田商だった。
■桜庭正義が、あとわずかでフォール勝ち逃す!
そして、春のセンバツで松野をフォールしている桜庭がマットに上がる。松田主将が「組めば強い」と話すように、柔道歴9年の櫻庭は、得意の投げ技で松野から立て続けに3点技を奪って、第1ピリオドをテクニカルフォール。
■インターハイ決勝 | |||||
霞ヶ浦 | ○[4−3]● | 秋田商 | |||
50 | 小宮佑介 | ● | 1−2 | ○ | 佐々木峻介 |
55 | 朝比奈健人 | ● | 0−2 | ○ | 伊藤 拓 |
60 | 古谷和樹 | ○ | 2−0 | ● | 桑原章嘉 |
66 | 井出倫太郎 | ● | 0−2 | ○ | 松田健悟 |
74 | 坂本悠太 | ○ | 2−0 | ● | 殿村和城 |
84 | 松野祐也 | ○ | フォール | ● | 桜庭正義 |
120 | 前川勝利 | ○ | 不戦勝 | ● | −− |
第2ピリオドも小手でふって、フォール体勢へ持ち込んだ。一時は、レフェリーが手を挙げてフォールを認めたが、ジャッジ、チェアマンの同意がなく、その間に松野がこん身の力でブリッジして逃げられてしまった。
「フォールの手ごたえはありました。勝ったと思った」と桜庭。横山監督も「松野君の意地を感じた。あのフォール体勢から逃げるとは」と、悔しさをにじませた。
内容や流れは秋田商にあったが、勝てなかった現実に「まだ、なにか足りない」と横山監督。それでも、難攻不落とも言われる霞ヶ浦を十分に脅かしたことは、来年へのステップになっただろう。松野からフォールを奪いかけた櫻庭は2年生。「霞ヶ浦との差はそこまでない。頑張れば勝つことは出来るんだと思った」という松田主将の意思は来年へ引き継がれてゆく。