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【特集】「押立さん、王座奪回しましたよ」…大阪・吹田市民教室が8つの金メダル【2010年7月26日】

(文・撮影=増渕由気子)

 

 毎年レベルが高くなってきている全国少年少女選手権。159チームが参加した中で、最も多くの金メダルを獲得したチームは、3年ぶりに吹田市民教室(大阪)だった。8階級制覇で、優勝は下記の通り(右写真)

2年生24s級Red 伊藤海
2年生24s級Blue 千森稔矢
4年生26s級 竹下雄登
4年生33s級Blue 佐長拓未
5年生34s級 田縁真大
5年生45s級 坂野秀尭
6年生57s級 浅野大地
6年生36s級 澤葉菜子

 1984年にこの大会が行われて以来、20年以上にわたって「キッズクラブ・ナンバーワン」の称号は吹田市民教室のものだった。しかし、2007年に台頭してきたGOLD KID'Sに奪われた。同年秋には、創設者で少年少女レスリングの発展に尽力した押立吉男代表
(左写真)が逝去。2009年もGOLD KID'Sの後塵を拝する状況だった。

 現在、この大会の表彰は個人戦のみで、団体戦としての表彰はない。だが、チームでいくつ金メダルを取るかは、各チームの看板がかかっているだけに、指導者たちは必死だ。大会後、団体1位の成績であることを吹田市民教室に告げると、西尾秀明監督、伊藤順次コーチ、そして保護者一同、「よかった、よかった」と感激しあっていた。

■大会前の予想は、「最悪で2個」!

 「実は、大会前は最悪で優勝2つを予想してた」と伊藤コーチ。潜在能力は抜群の選手は少なくないが、結果を出せるかどうかは、やってみないと分からない状況だった。

 それだけに、8つの優勝プラス「金メダルの数1位」の結果に、「選手たちがよく頑張ってくれた。きん差だけれども、GOLD KID'Sにも勝ててうれしいです」と話した。「押立さんが作り上げた伝統は何一つ変えない」という方針の下、指導者が団結して取り組んできたことが、ようやく板についてきたようだ
(右写真=王座奪還にもかかわらず、試合後には入念なミーティング)

 特に光った活躍を見せたのが、2年生24s級Redの伊藤海。昨年は優勝候補の最右翼ながら2位に甘んじ、悔しい想いをした。今年はダントツの強さを見せ、全試合で10点差をつけて圧勝。「タックルをすごく頑張りました。(今後も)ずっと勝ちたいです」と宣言。母の伊藤架奈さんも「家でも練習したりと頑張っていました。本当によかったです」と愛娘の活躍を称えた。

 また、6年生36s級の澤葉菜子もチームを引っ張った一人で、今大会4連覇を達成した
(左写真)。兄・太朗は、JOCアカデミーからスカウトされ、現在、東京でエリート教育を受けている。「私も、もっと強くなってアカデミーに行きたい」と目を輝かせた。

 最悪2つの予想から、ふたを開けてみれば8個の金メダルを獲得したことは、決して“まぐれ”ではない。伊藤コーチは、「昨年成績が悪かった5年生の5人は、この1年間、居残り練習を1時間以上やっていました」と話し、王座奪回に向けて個々が自覚を持って練習に取り組んできたことを強調した。

 伊藤コーチは「これで、(天国の)押立さんに、いい報告ができます」と、ちょっぴりホッとした様子を見せた。伝統の底力が、来年以降も発揮されることが期待される。



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