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【特集】全日本学生連盟・滝山将剛会長に聞く【2010年6月28日】


 日本レスリング界の輝かしい栄光を支えてきたのは、大学のレスリング界だ。ルールの変化や教育制度の変化の影響もあるだろうが、学生レスリングの衰退と日本が世界の一流国を転落したことは無関係ではあるまい。

 近年、学生が世界選手権の代表になるなど、復活の兆しが出てきた。レスリング王国・日本の復活は、学生レスリング界の発展なくしてはありえない。かつて国士舘大の監督として金メダリストを含めて多くの五輪選手を輩出し、昨年、全日本学生連盟のトップに就任した滝山将剛会長(現国士舘大部長)に、学生レスリング界の今後を聞いた。(聞き手=樋口郁夫)




 ――全日本学生連盟の会長に就任されてから1年以上が経ちました。学生レスリングの現状を、どうご覧になっていますか。

 「全日本学連主催の大会の運営については、東日本学連と西日本学連が直接管轄しており、それぞれが一生懸命やっていると思う。5月の東日本学生リーグ戦(東日本学連主催)では、役員席をひな壇として大会を盛り上げた
(右写真)。これは今後の大会運営の良い例として参考になると思います。私が東日本学連の会長だった時の2008年に、リーグ戦最終日を日曜日に開催し、都心の青山学院大体育館でやったことがあった。その時、日本協会の福田富昭会長から『大会を盛り上げるために、(ひな壇を)作ってみたらどうだ』との助言を受け、申し送って今年実現したと考えている。大会の会場として立派になり、よかったかなと思う。また、日本協会の今泉雄策副会長からは『リーグ戦の決勝は夜、後楽園ホールでやるのもいいんじゃないか』との助言をいただいた事実がある。ただ、予算との兼ね合いがあるし、日本では米国ほど学生レスリングの人気があるわけじゃないので、どこまでやっていいものか迷うところだ」

 ――全日本学生選手権などで、盛り上げるための演出の予定は?

 「大会を東日本と西日本で1年ごとに交互にやっているため、会場の確保などに手間を取られて盛り上げようというところまで手が回らないのが現状だ。ことに、1年おきだと駒沢体育館の確保が難しい。5年くらい連続で駒沢体育館でやりたいという構想を持っている。会場確保のために時間を取られなければ、細かなところまで神経が行き届くと思う」
(左写真=学生レスリング界の今後を話す滝山会長)

 ――大会日程と場所が固定されてこそ、盛り上げる演出にまで手が回る、と。

 「それだけではない。実は以前、当時の全日本学生連盟の伴義孝会長のつてで広告代理店の担当者にレスリングの大会を見てもらったことがある。『とても金の取れる大会ではない』と相手にされなかった。選手のマナーが悪く、『観客席で上半身裸でいる』『観客がマットサイドまで来て応援している』『セコンドが審判にくってかかる』など、とてもスポンサーのつく大会としての演出ができていないと、耳の痛いことを言われた。学生選手のマナーからの指導が必要だ。OBだからといってフロアへ降りてきたり、自軍のベンチに座ったり、審判に暴言をはいたり、これも問題! まず、こうしたことを是正しなければならない。そのうえで、どのマットで何の試合をやっているかがはっきり分かるような大会にしていかねばならない。やるべきことはたくさんある。ひとつひとつクリアして、観客が来て、入場料の取れるような大会にしたい」

 ――昨年は、9月14〜17日に全日本学生選手権があり、25日に全日本学生王座決定戦。27日からは国体が始まった。過密すぎるスケジュールだったと思う。

 「昨年のケースは特殊であるが、会場の確保が最重要課題である。全日本学生選手権は、会場の関係でどうしてもその時期しか取れなかった。会場の確保は大きな問題だ。3日間にすると、4面マットでは厳しく、マット数を増やせば審判の確保が難しくなる。4日連続で大会を開催することは難しい現状を知ってほしい。ただ、努力はしたい。土曜、日曜日が含まれるようにし、多くの人が見に来られるような大会を運営したい」

■存在価値の薄れている全日本学生王座決定戦の“処遇”は、大きな懸案事項

 ――全日本学生王座決定戦の存在価値が薄れていますが? 国体が夏秋同時開催となって9月終盤から10月初めの開催になった。過密日程の中で、9月下旬にこの大会を開催する意味があるのでしょうか。西日本からの参加も少なく、東日本リーグ戦の二番煎じの大会ともなっている
(右写真=昨年の全日本学生王座決定戦で優勝し、喜ぶ早大選手)

 「学生界の現在の大きな懸案事項です。話し合いもしている。元は東日本と西日本のチャンピオン同士が闘う王座決定戦として行われた。しかし東西の格差があり、11−0の試合もあった(注:以前は8階級11選手で試合をやった)。これではダメだということで、多くの大学が参加しての大会にした。バッドマーク方式にして2敗するまで闘える大会にするなど、チームのモチベーションを高めるためにいろいろ工夫をしてきたが、確かに存在価値が薄れている」

 ――全日本学生王座決定戦に西日本の大学が参加してこない理由に、西日本学生選手権と日程が近いからという年もあった。日程は連盟同士で話し合って調整できないのか。

 「全く重なっているのならともかく、ずれているのなら、どちらを取るかはその大学の価値観の問題になる」

 ――東日本と西日本のリーグ戦の上位2チームずつに出場を義務づけ、4チームのリーグ戦の大会にする、その代りに強化費を支給するなどして、大会の権威を上げて出場の動機づけをするのもひとつの方法と思うが。

 「東西の差があるので問題が出てくる。西日本の1、2位より東日本の3、4位の方が強いのが現状。東日本の3、4位の大学から、なぜ西日本に強化費が出て、ウチに出ないんだ、となる。援助金を出して、東西の問題が解決するとは思っていない。大会をやめる案も出ているが、40年以上も続いてきた大会をやめるだけの、だれもが納得できる理由が見当たらない。試合数が多すぎることはよく理解している」

 ――全日本女子オープン選手権という名称の時代から20年以上続いてきた全日本女子選手権がなくなった(明治乳業杯全日本選抜選手権に統合)。しかし、何も問題は起こっていないし、大きな不満も上がっていない。過去を引きずるのではなく、果敢に改革に挑むことも必要だ。

 「個人戦と団体戦の違いはあると思うが、検討事項として審議していきたい。古きよき時代の伝統を守っていくことと、改革に挑むことの双方をやっていかなければならない」

■今年2月にブルガリア遠征を実施、「学生の目を世界に向けさせたい」

 ――全日本大学選手権と全日本大学グレコローマン選手権についてはいかがでしょうか
(左写真=昨年の全日本大学グレコローマン選手権、優勝監督の拓大・須藤元気監督と滝山会長)

 「2大会をまとめ、同時開催にしようという案もある。しかし、フリーとグレコに分かれている大学の方が少なく、多くの大学で選手が掛け持ちして出場している。大会をまとめることで、選手の大会出場の機会を奪ってしまうことになる。それによって大会のレベルも落ちてしまう。一方で、東日本学連の大会だが、東日本の新人戦は秋だけでもいいかな、と思う。春はJOC杯ジュニアオリンピックがあるので、新人の力試しはここでできる」

 ――強化についてはいかがでしょうか。2年前の世界学生選手権ではフリースタイルで3選手が優勝しました(55kg級=稲葉泰弘、60kg級=大沢茂樹、66kg級=米満達弘)。昨年、今年と世界選手権に学生選手が出場する(昨年=フリー60kg級・前田翔吾、同120kg級・荒木田進謙/今年=フリー60kg級・小田裕之)。かなり上がったと思いますが。

 「まだまだだ。学生は弱い、と言われながら、その弱い学生が社会人になると、学生を簡単にやっつけるのが現状だ。ただ、学生の取り巻く環境が以前より厳しくなっていることは確か。あまり大きな声では言えないが、以前はスポーツだけをやっていても卒業できた時代だったが、今は単位をもらえない。現在の教育制度の中でスポーツの発展は厳しいものがある」

 ――冬に学連の合宿をやっていますが。

 「今よりも長い期間、本格的に鍛える合宿をやらないと、韓国や中国と差ができてしまうばかりだ。毎冬に学生選抜チームをアメリカのデーブ・シュルツ国際大会に遠征させていたのを、今年はブルガリア遠征に変えた。世界に目を向けさせる努力はしているつもりだし、今後もやっていく。今年のブルガリア遠征では、大会前に練習試合を3回実施した。若い選手にとっては、良い経験になったと考えている」
(右写真=ブルガリアへ遠征した学生選抜チーム)

■実現するか、日韓大学最強決定戦

 ――学生に世界に目を向けてもらうために、日本の最強大学と韓国の最強大学とで日韓大学一決定戦を実施するのはいかがですか。日本の最強大学が韓国の最強大学に0−7で負けては恥ずかしい。韓国に太いパイプのある滝山会長ならできると思う。

 「この件については、日本協会の福田富昭会長にも加わっていただいて、韓国の関係者と良い方向性を見い出す心算で話は進行中です」

 ――学生界は、強化でも普及でもやるべきことが山積みですね。

 「最近はマットの外でいろんな問題が起きて、強化や普及に手が回らないのが現状だ。どの大学・選手にもスポーツマンとしての自覚を持った行動を望みたい。そうなってこそ、発展へつながる活動ができる」



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