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【特集】今季負けなし! 野口監督下の埼玉栄から初のインターハイ王者へ王手をかけた保坂健【2010年6月7日】

(文・撮影=増渕由気子)




 関東高校大会の66s級は、埼玉栄の保坂健(右写真)が初優勝した。1月の関東高校選抜大会、3月の全国高校選抜大会に続いて3大会連続で負けなし。飛ぶ鳥を落とす勢いで成長している。この調子でいけばインターハイ優勝も夢ではない状況だ。

 保坂は今年出てきたニューヒーローだ。昨年はシーズン始めに左手の手首を骨折していた影響で不本意な結果に終わった。加えて、野口篤史監督は「精神的に子供だった」と、不調だった原因を挙げる。それまでの保坂のレスリングとは、集中力が切れると試合を投げ出し、大量リードを奪っていると、油断して逆転フォール負けをするような状態だった。

 「勝てる素質を持っている選手なのに自覚がない。あと1年で勝たせなければ」。焦った野口監督は、苦肉の策で、一か八かの大勝負に出た。「新体制になった1月に、保坂に『やる気がないなら秋田へ帰れ!』と怒鳴り散らしたんです」。最初こそ、保坂は「はい、秋田に帰ります」と“喧嘩を買った”ものの、そこで、腹を割って話し合うことで、お互いに分かり合い、同じベクトルを向くようになった。

 関東高校選抜で優勝したのは、その直後である。3月には全国の舞台で初優勝を遂げた。ちびっ子からレスリングを始めた保坂にとって、意外にもこれが全国初タイトル。その優勝は、1990年から埼玉栄で指揮を執る野口監督にとっても、初となる全国チャンピオンの称号だった
(左写真=野口監督と保坂)

 「国体や関東大会では、これまでも優勝者を作りましたが、インターハイはまだ…。OBの鈴木豊(現自衛隊コーチ=北京五輪予選代表)の時もチャンスがあったのですが、大会直前にけがをしてしまって優勝できなかったんです」と野口監督(それ以前は1986年の75kg以上級・小幡弘之と87年の75kg級・石川宏明が優勝)。今季負けなしの保坂にかかる期待は、8月のインターハイ優勝だ。

 「小さい頃、同じ秋田出身の宮原崇さん(明大〜国士舘大学院)の高校三冠王にすごくあこがれた。ボクも(三冠王を)やってみたい」と、本人もやる気は十分。夏特有の汗をかくレスリングも「得意です」と明かし、自信を見せた。

 今大会は全試合無失点。決勝戦でも、霞ヶ浦の井出倫太郎をタックルで翻ろう。野口監督も「相手を入らせないし、タックルで点が取れる」と、保坂のスタイルはべた褒め。高校3年でその才能を開花させた保坂。夢のインターハイ王者、そして三冠王への挑戦が始まった。


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