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【特集】10年目の節目に優勝! 太田さい配が当たって涙の悲願達成【2010年5月22日】

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)
 
階級 早 大 試合結果 拓 大
55kg級 柏木健太   2−1(0-2=2:30,3-0=2:30,2-1) 中野裕仁
60kg級 松本 桂 2−1(0-1=2:06,2-1,2-0)   鈴木康寛
66kg級 石田智嗣 2−1(1-0=2:06,0-1=2:20,3-0=2:11)   岡本佑士
74kg級 北村公平   フォール、2P1:02(0-1=2:03,F5-0) 高谷惣亮
84kg級 山口 剛 フォール、1P1:13(F5-0)   赤熊猶弥
96kg級 武富 隆 2−0(2-0,1-0)   岡 太一
120kg級 殿村幸城 途中棄権、1P(4-0)   村木孝太郎

 太田拓弥コーチの体が宙に舞う−。伊江邦男監督は男泣き!(右写真=胴上げされ、目頭を押さえる伊江監督) 東日本学生リーグ戦の決勝は、早大が連覇を狙う拓大を5−2で破って、62年ぶり6度目の優勝を果たした。11年前に伊江体制で早大改造計画が実行され、その1年後に太田コーチが専任コーチとして招へいされて、今年で10年目。その節目の年で、涙の涙の優勝を飾った。

■2005年のグループ優勝から、5年の月日をかけてリーグ優勝!

 2005年の予選グループ優勝から、早くも5年の月日が経った。昨年もグループ優勝を果たすが拓大に返り討ち。今年こそ優勝をスローガンにチーム一丸となってリーグ戦に乗り込んできた。

 太田コーチにとっても今年は勝たなくてはいけなかった。「去年までは、やってみないと分からないチームだった。今年は勝てるチーム。なんとか勝たせてあげたい」。学生たちの準備は万端。あとは、太田コーチのさい配次第という状況だった。

 120kg級以外は3人ずつのフルエントリーができ、60kg級のように、その3選手全員がタイトルに絡む結果を残している階級もある。そんな魅力ある戦力だった。だが、太田コーチがセレクトしたオーダーは、予想外なものだった。そのキーマンは“60kg級の選手”だった。

 「このチームは主将の松本を中心として闘ってほしいチームだった」と太田コーチ。60kg級は松本桂主将をフル出場させた。松本は7戦全勝という結果で応えてくれた。だが、全日本選抜選手権で小田裕之(国士舘大)を破った石田智嗣とJOC杯ジュニアオリンピック2位の柏木健太を60kg級の控え選手においておくには、あまりにももったいない。

 そのため、柏木を55kg級に減量させてエントリー。骨太で体格の大きい相手とやっても壊されそうにもない石田は66kg級や74kg級に配置した。「去年のリーグ戦が終わった直後から柏木健太の55kg級は考えていた」と、このオーダーは1年がかりの構想。柏木も、かなり前から減量の準備を始めた。だが、本当に苦しい減量だった。太田コーチは「もう、止めようか?」と何度も相談したという。

 その苦しさを乗り越えてくれた柏木。結果だけ見ると日大、山梨学院大、拓大と大一番ではすべて敗戦。だが、その試合内容に、60kg級以降の松本らが鼓舞された。決勝の拓大戦の96kg級で早大の勝利を決める白星を挙げた武富隆(74kg級で計量)も、その一人。「柏木の頑張りが心強く思えた」と勇気の源になった。“55kg級の柏木健太”の作戦は、早大の結束力をさらに強めたといっていいほど、ズバっと当たった。

■10年前は地に落ちていたワセダ・ブランド、今は最高の輝き!

 太田コーチは、リーグ戦前に何度も決勝の舞台でアップ勝負にもつれる夢を見たという。リーグ戦中は睡眠時間が3時間ほど。「勝てるチームだけにプレッシャーがありました」と、その心境を吐露した。

 太田コーチのさい配も当ったが、「勝因はチーム力。エース級の選手が負けても、それをカバーできる戦力がありました」。例えば、今大会はJOC杯ジュニアオリンピック優勝の66kg級の田中幸太郎が万全ではなく、負けたりポイントを取られるシーンが多かった。

 すると決勝では石田をこの階級に起用した。一人が不調でも影響がないほどのチーム力があった早大。スカウトなどもうまくいき、タレント軍団が結成できたのも大きい。今年の1年生は全員がタイトル持ちの選手だ。

 太田コーチは、「私が早大に来たころは、スカウトも大変だった」と振り返る。早大というブランドを提示しても、リーグ戦の結果などが芳しくないのを理由に断わられることもしばしば。そんな苦労があったからこそ、優勝の瞬間は感無量だった
(右写真=涙ながらに優勝を振り返る太田コーチ)

 「62年ぶりの優勝と言っても、初優勝に等しい。本当に産みの苦しみを味わいました」。10年目という節目にやっと太田コーチの努力が実った瞬間だった。


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