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【特集】阿部三兄弟が日本を席巻する日は来るか−末っ子・敏弥がぶっちぎりの優勝!【2010年5月9日】

(文・撮影=増渕由気子)
 

 兄弟での活躍がひときわ目を引くレスリング界。将来、大物三兄弟へ変貌を遂げそうなが阿部三兄弟だ。5月8日に東京・町田市総合体育館で行われた東日本少年少女選手権の男子5・6年の部34kg級で、阿部三兄弟末っ子の敏弥(水戸スポーツ少年団)が優勝(右写真)。全国大会6連覇中という強さを見せつけ、失点はゼロ。完勝といっていい内容だった。

 長女の千波は愛知・至学館高校3年で先日の全日本選抜選手権女子48kg級で決勝に進出し2位。長男の宏隆は茨城・鹿島学園高の2年生で、1月にはインターハイ・チャンピオンを破って関東高校選抜王者になった。敏弥のモチベーションは姉と兄の活躍。「2人とも勝ってきているので、自分もできると思った」と、その背中を自然と追っている。

 兄弟なら、見た目はもちろん、競技スタイルも似てくるものだが、この兄弟は違う。父で監督でもある敏明氏は「宏隆はスピードとタイミングで勝負するタイプ。敏弥はガッツで勝っている」と分析する。見た目も明らかに違う。兄は細身で、現在50kg級の選手。だが、弟は特別な筋トレをしている訳ではないのに、骨格が同階級では飛び抜けて大きい。

 その秘密は食生活にあった。「宏隆(兄)は、魚とかを好んで食べていた。でも、敏弥は、トンカツばっかり食べるんですよ(笑)」。三食トンカツも敏弥にとっては、アリの組み合わせだそうで、「ステーキやハンバーグもよく食べます」(敏弥)と大好物の肉をエネルギーに、飛びぬけた体を作り上げたようだ。

■7月の全国大会で7連覇を目指す!

 敏明さんによると、性格も全然違うという。「兄は周囲とうまくやるタイプ。弟は物事をはっきり言うタイプ」。大人が矛盾した事を言っていると、「前と言っていることが違う」と、かみつく時もあるようだ。敏弥はとにかく正義感にあふれた選手だ。決勝戦の安楽龍馬(柏)戦では、大量得点を狙いにいったが、相手に少し逃げられてしまった。

 敏弥は地団太を踏んで悔しさをあらわにした。レスリングは逃げてはいけない競技。その競技者としてあるべき姿を忠実に守ろうとしていたのだ。そのまっすぐな心が、レスリングの伸びにつながっている。 敏明さんに敢えて末っ子の課題を挙げてもらった。「集中力が足りないかな…」
(左写真=父と敏弥選手)

 末っ子・敏弥の次の目標は7月の全国少年少女選手権大会(広島市)。幼年時に初優勝して、昨年まで6連覇を達成している。今年、小学校6年生になり、同大会の出場も最後となる。「注意しなくてはいけないライバルは何人かいますけど、(優勝する)自信はあります」。万全な態勢で、広島の地で悲願の7連覇を目指す。

 最後に、最終的な目標を聞くと、鼻息を荒くして答えてくれた。「お兄ちゃんみたく強くなって、(将来は)オリンピックの選手になりたい」。個性豊かな阿部三兄弟が日本を席巻する日はやってくるのか−。


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