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【世界選手権代表決定選手】男子グレコローマン55kg級・長谷川恒平(福一漁業)【2010年5月4日】

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)
 

 男子グレコローマン55kg級は、アジア王者にして全日本王者の長谷川恒平(福一漁業)が格の違いを見せ付けた(右写真=決勝で闘う長谷川)。安定した試合内容で3連覇を達成した日本のエースは「世界選手権ではメダルを取るしかないと思っている」と明言した。

 決勝の相手は第2シードの峯村亮(神奈川大職)だった。第1ピリオド、グラウンドでポイントを奪った長谷川は、第2ピリオドに入ると「この大会に向けて練習していた」というスタンドの攻防でポイントを獲得。第2シード選手を寄せ付けない貫録の勝利で、昨年に続く世界選手権への出場を決めた。

 今大会に向けては、気持ちを高めるいくつかのモチベーションがあった。一つは練習先の日体大が、不祥事のためにいまだ試合に出られない状態が続いていることだ。「学生は試合に出られない。彼らのモチベーションを上げるには、ボクらが勝つことしかないと思った」。たとえ試合に出られなくても日本一の選手と練習をしている。そんな勇気と希望を学生たちに与えたかった。

 2週間ほど前、可愛がってくれた祖父の勇さんが亡くなった事実も、勝てなければならない理由になった。「おじいさんはいつも自分の試合を楽しみにしてくれた。ロンドンに連れて行きたかったんですけど…」

 世界選手権代表の座をがっちりとものにし、これからは世界のトップを見据えた練習が始まる。スタンドとグラウンドを並行してレベルアップさせようと長谷川は考えている。「スタンドでは得意の一本背負いだけど、それだけでは警戒されてしまうので、別の技も磨いていきたい。グラウンドは今のところローリング中心だけど、リフト技も入れてコンビネーションを増やしたい」

 最終目標はおじいさんが楽しみにしていたという2012年ロンドン五輪。世界でも名前が知られ始めた25歳は「1試合も気の抜けない状況で勝ち抜く精神力と体力をつけて世界のトップと勝負したい」と声を弾ませていた。


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