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【世界選手権代表決定選手】男子フリースタイル60kg級・小田裕之(国士舘大)【2010年5月4日】

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)
 

 2008年北京五輪3位、2006年世界3位、昨年の世界5位と強豪ひしめく男子フリースタイル60s級。今年の世界選手権日本代表を手にしたのは、全日本選手権優勝者の小田裕之(国士舘大)だった(右写真=プレーオフで勝って世界選手権出場を決めた小田)

 「この大会前からストレートで決めるつもりだった。必死に世界選手権のキップを取りに行きました」と意気込んだが、初戦(2回戦)は66s級から階級を下げて挑んできた石田智嗣(早大)に1−2と敗北。全ピリオドともにクリンチで決まった勝負だった。

 気持ちがレスリングに出やすいタイプ。「1回戦で負けてしまって、気持ちが切り替えられるか心配だった」と本人自身も不安を感じたようだが、そこを自力で乗り越えた。プレーオフの相手は、昨年世界5位で今大会連覇を達成した前田翔吾(ニューギン)。「以前負けている相手だが、内容は悪くなかったし、普通にやれば勝てると思った」と、小田ワールド全開の内容でストレート勝ちを納めた。

 国士舘大の現役学生が世界選手権出場を決めたのは、1995年の戸井田昌教(フリースタイル48kg級)以来の快挙。和田貴広コーチが就任してからは、初めてのことだ。和田コーチは「素直にうれしい。小田は国際的に通用する選手。世界の公式戦に出てそのレベルを早く体感してもらいたい」と興奮を隠せなかった。

 2000年シドニー五輪代表と海外での実績を多く持つ和田コーチは、「負けた直後は何も言わなかった」と、あえて小田自身で初戦敗退という現実を乗り越えさせ、さらに、決勝前には注文をつけた。「本戦で負けたのは未熟だから。プレーオフ前には、前田は実力者だから負けて当然。覚悟を決めて、負けるなら勝負して負けろ。オリンピックや世界選手権に出たければ、初戦のような的を絞った攻撃や、クリンチ任せな勝負はするな」と突き放したそうだ。 

 その和田コーチの叱咤激励に見事に応えた小田。初の世界選手権で「自分がまだ世界のどの位置にいるかわからないので、すべてを出せてメダルを取れたらいい」と抱負を語った。日本屈指のテクニシャン・和田コーチが世界に送り出した小田が、大学4年で世界の大舞台に挑む。


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