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【世界選手権代表決定選手】男子フリースタイル55kg級・稲葉泰弘(専大)【2010年5月4日】

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)
 

 日本のお家芸である男子フリースタイル最軽量級・55s級は、全日本チャンピオンの稲葉泰弘(警視庁)が決勝で湯元進一(自衛隊)に1−2で敗れたものの、プレーオフを制して初の世界選手権代表を決めた(左写真=プレーオフで闘う稲葉)

 一筋縄ではいかない世界のキップ取りだった。決勝までの2試合は無失点で完ぺきの出来。準決勝では湯元が2004年アテネ五輪銀メダリストの松永共広(ALSOK綜合警備保障)にフルピリオドを闘っており、湯元より体力は温存されていたが、決勝では湯元の組み付いてのタックルに苦戦した。

 同階級でパワー系レスラーの真骨頂が湯元だとしたら、組み手派のナンバーワンは稲葉。小平コーチは「組み手は稲葉がずっと有利に進めていた」と話したが、湯元につかまえられると、強引にパワーでやりこめられた。第3ピリオドもそうだった。前半35秒でタックルを決め、優位に試合を進めた。だが、ダメ押しの1点を狙いに懐に入ったところを返されて1−3。あと少しで優勝を逃してしまった。

 プレーオフは「1回負けていたので、思い切りやろうと思った」と気持ちを切り替えた。「本戦の1ピリオドはポイントを取られてしまったが、2、3ピリオドの内容は悪くなかった」と、本戦の敗北も引きずることもなかった。第3ピリオドにもつれた勝負は、1点ビハインドに加えて、終了間際に湯元タックルを食らうが、すぐさま3点となるがぶり返しが成功。3−3のビッグポイント差できん差をものにした。

 一時、判定が2−3となり、稲葉のセコンドがすかさずチャレンジした末に3−3に修正されての勝利。快勝とはいかなかった。「微妙な状況だったので、どうなるかと思っていたが、決まったときはうれしかった」と両手を突き上げた。9月には初の世界選手権を迎える。「出るからには優勝を目指して全力で自分のレスリングをしたい」。高校の強豪・霞ヶ浦高を経て、専大では男子の佐藤満・強化委員長のに師事。佐藤委員長の秘蔵っ子・稲葉が、ついに世界デビューを果たす。


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