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【世界選手権代表決定選手】男子グレコローマン74kg級・鶴巻宰(自衛隊)【2010年5月4日】

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)
 

 昨年のアジア選手権で3位に入った鶴巻宰(自衛隊)が、決勝で金久保武大(マイスポーツ・ハウス)に敗退。プレーオフで辛くも金久保を退け、世界選手権出場を決めた(右写真=プレーオフで闘う鶴巻)

 1月の末に腰を痛め、海外遠征を取りやめた。その影響は思いのほか大きく、3月いっぱいは「満足にレスリングの練習ができなかった」という。悪いなりにも仕上げて大会に臨んだつもりだったが、やはり、世界選手権の出場権がかかった大会は甘くない。負傷を抱えた実力者は大苦戦した。

 金久保が相手となった決勝戦。鶴巻はグラウンドで攻撃権を得ながらポイントを上げられず、第1ピリオドを失った。何とか守り切って第2ピリオドを奪うも、動きに本来の切れはない。迎えた最終ピリオド。守り切れば勝利の場面で、金久保のローリングをこらえきれず、全日本選手権との連覇の夢はついえてしまった。

 「腰を反ると痛みが走る」というだけあって、動きはどこか緩慢。表情からも覇気が伝わってこない。そんな状況で、鶴巻を支えたのは日の丸を背負うレスラーとしてのプライドだったに違いない。迎えたプレーオフ、74s級の第一人者が意地を見せた。

 第1ピリオド。スタンドの攻防ではスタミナを温存し、グラウンドでこん身のローリングを決めて先制。しかし、金久保はこのチャンスに燃えていた。第2ピリオドは金久保がスタンドで仕掛けてポイントを上げる。勝負の最終ピリオド。残り10秒で金久保のローリングが決まりかけたが、あと一歩のところで回し切れない。金久保は拳をマットにたたきつけて悔しがり、勝った鶴巻は「ギリギリでした」と胸をなでおろした。

 試合後、立っているのも辛そうな鶴巻は「1日に2回も負けられないですから」と意地の勝利を強調。世界選手権に向けては「今日はグラウンドで失点したので、グラウンドのディフェンスを修整したい」と決意を語った。大舞台での活躍するためにも、まずはけがの治療が先決だろう。


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