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【世界選手権代表決定選手】男子グレコローマン120kg級・新庄寛和(自衛隊)【2010年5月3日】

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)
 

 男子グレコローマン120kg級は全日本王者の新庄寛和(自衛隊)が、決勝でライバルの中村淳志(カンサイ)を寄せつけずに4連覇を達成。勝利者インタビューでマイクを向けられ、「今年はアジア大会、世界選手権と大事な大会が続くので、国内では絶対に負けられなかった」とほっとした表情を見せた(右写真:決勝で闘う新庄=右)

 世界の重量級で結果を出したい新庄にとって、国内の大会はただの勝利だけでは済まされない。内容を伴ってこそ、世界で闘うモチベーションも上がるというもの。決勝の中村戦、そんな気持ちがレスリングに表れた。この階級は、スタンド、グラウンドともに攻めてポイントを奪うのはなかなか難しい。

 しかし、そんなことを言っていては世界で勝てない。第1ピリオド、グラウンドで先に攻撃権となった新庄は、うまくタイミングをつかんで中村を1回転。どんな状況でも「決してあきらめない」という強い精神力が生んだ見事なローリングだった。

 「世界で重量級は勝てない」という国内に蔓延する“常識”を覆すべく、新庄は地道なトレーニングを積んでいる。スタミナを強化する走り込みしかり、パワーを身につける筋力トレーニングしかり。特に筋力面ではトレーニングの効果を実感しているという。瞬発力を高めるバーベルを使ったハイクリーンというトレーニングで、かつては110s程度だったバーベルを、今では120〜125sまでにアップ。一瞬のスピードは、数字上でも着実にアップしている。

 世界選手権の目標は、あくまでも表彰台。「海外ではグラウンドで回せなかったり、ディフェンスでずらすことができなかったり、技術面で負けてきた。力では負けていないと思っているので、これから技術を磨いていきたい」。海外勢との差は少しずつ詰まっているはず。最重量級は“選ばれし人間”のクラスだ。上位進出が実現すれれば、レスリングだけでなく、日本スポーツ界に夢を与えられるだろう。


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