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【世界選手権代表決定選手】女子48kg級・坂本日登美(自衛隊)【2010年5月3日】

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)
 

 2008年10月に51s級の世界V6を達成、現役女王のままマットを降りた坂本日登美(自衛隊)が、48s級で復活優勝。2004年アテネ五輪、2008年北京五輪に続いて3度目の正直となる2012年ロンドン五輪へ向けて好スタートを切った(左写真=決勝で闘う坂本)

 妹の真喜子は17歳で48s級の頂点に立ったが、2度のオリンピックは伊調千春に阻まれ出場ならなかった。ロンドン五輪を目指して再出発したが、昨年の世界選手権で2回戦敗退と惨敗したのを契機に、「ロンドン(の48s級は)は日登美が目指した方がいいよ」と選手としての限界を姉・日登美に告げた。

 正直、心が揺れた。だが、五輪への思いを断ち切れずいた日登美は現役復帰を決断。今までは世界女王になっても五輪に出られない歯がゆさを感じていたが、今では妹との姉妹対決の心配もなく、堂々と48s級に挑める。「減量は正直きつい部分もありましたけど、五輪を目指せるんだと思ったら、苦しさよりうれしさが勝っていた」と、最大の難所である減量もクリアした。

 そもそも51s級では、「朝からジャンクフードを食べていたり、夜も外食ばかりでした」と、好きなものを好きなだけ食べることでストレスを発散していた。そのため、「自炊し始めたら、すぐに体重が落ちました」と、普段からの節制で減量の問題は解決。「レスリングと同じく、やりはじめたら楽しくなった」と慣れない自炊も楽しみの一つに変えた。

 約1年半ぶりの公式戦だけに、1回戦の出だしでタックルの処理に失敗。バックポイントで1点を許したが、それ以後は教科書のような完ぺきなレスリング。タックルで確実にテークダウンを奪うと、得意技のアンクルホールドでポイントを次々と奪った。

 「48s級の選手は力がなかった」と、元51s級のパワーを見せ付けての勝利。「五輪を目指せて本当に幸せ。真喜子も応援してくれた」。計量後には、真喜子が手作りのケーキを差し入れしてくれてパワーを戻した。

 “姉妹で五輪”から“姉妹で力を合わせて夢の五輪へ”―。栄和人女子強化委員長から“世界最高のレスラー”と言わしめた日登美。五輪で金メダルという坂本日登美伝説の最終章が、この日、幕を開けた。


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