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【世界選手権代表決定選手】男子フリースタイル84kg級・松本篤史(ALSOK綜合警備保障)【2010年5月3日】

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)
 

 男子フリースタイル84s級は、昨年のアジア選手権代表の松本篤史(ALSOK綜合警備保障)が、昨年の世界選手権代表の松本真也(警視庁)を2回戦とプレーオフで2度破り、初の世界選手権代表に決定。「真也さんに2連勝したことがないのでうれしい」と笑顔を見せた。これで、兄でグレコローマン60s級で優勝した松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)と同時優勝。日本レスリング界史上初となる兄弟そろっての世界選手権出場を決めた。

 2008北京五輪予選代表の鈴木豊、2008年全日本選手権優勝の小幡邦彦が現役を退いたこの階級は、松本真と松本篤がツートップだった。昨年のこの大会の決勝もこの顔合わせで、松本篤は敗退。世界進出はならなかったどころか、後半はチームの選手の不祥事によって活動停止処分を受けてしまった。

 「去年の後半は試合に出られなかった」と、優勝後は苦しかった半年間の本音を吐露。全日本合宿の参加も見送られ、松本真の差を埋められずにいたが、半年振りの公式戦でしっかりとライバルにリベンジ。プレーオフではストレートの完勝で初の世界選手権代表を手に入れた
(左写真=プレーオフで勝った松本篤史)

 初戦の伊藤拓也(マルハン)戦は「足が動かなかった」と不本意な内容でのスタートだった。だが、これが2回戦の松本真戦を迎えるためには、いいウォーミングアップになった。本戦での松本真戦は、第1ピリオドに立て続けにタックルを決められた。遠間は片足タックルが得意な松本真の間合いで、「いつもそれで負けている」という松本篤は、すぐに作戦を切り替えて、右を差しに行った。1度は差しにいったところを合わされて3点投げを食らったが、「右を差して捕まえていれば、大丈夫」と、第2ピリオドからは自信のパワーで相手を封じて2−1の逆転勝利を収めた。

 プレーオフでも、松本真の生命線である片足タックルを封じてストレート勝ち。フリースタイルの王道はタックルというなら、グレコローマンのスタンドでは差しが基本。自分の自慢のパワーを生かすために、グレコローマンの技を積極的に取り入れたことが功を奏したようだ。その陰には兄の存在があった。「兄のアドバイスが効いた」。

 来週日曜日は母の日。「両親はいつも応援に来てくれる。母の日の前にいいプレゼントになった」と、兄弟そろっての優勝にホッとした表情。湯元兄弟(健一・進一)に続く、兄弟スターがまた一組、誕生した。


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