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【世界選手権代表決定選手】男子フリースタイル120kg級・下中隆広(国士舘大)【2010年5月2日】

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)
 

 男子フリースタイル120級は、まさに“政権交代”の時が訪れた。全日本V7の田中章仁の引退後、荒木田進謙(専大〜FEG)が2008年世界ジュニア3位、2009年アジア選手権3位などの海外成績を残して王者として君臨。だれもが荒木田時代の到来を予想した。だが、それにストップをかけたのが下中隆広(国士舘大学院)だ。

 昨年9月の新潟国体で荒木田を下して優勝。ライバルに土をつけたことで勢いに乗った下中は、全日本選手権も制して世界選手権出場に王手をかけた。もっとも、避けても通れない荒木田との試合が待っていた。

 決勝で相対した第1ピリオドは、下中がクリンチからの攻撃でポイントを奪ってリード。第2ピリオド、荒木田がゾーン際で下中を押し倒したが、すかさず下中がタックル返しとなるそり投げを決めて3点
(右写真)。荒木田サイドは、下中の足が先に出たとしてチャレンジしたが認められず。そのまま4−1で終了のブザーが鳴った。強敵に3連勝した下中は、「今日は自分が強かった」と話し、世界選手権代表の喜びに浸った。

 下中は、いわゆる“職業レスラー”ではなく、学業の合間をぬって2012年ロンドン五輪を目指している選手だ。国士舘大の和田貴広コーチによると、「練習は週に3、4回しかできない状況」という。それでも夜中の筋トレを実行するなど、環境に左右されずに努力を重ねてきた。下中も「和田さんに効率のいいトレーニングを教えてもらった。国士舘のみんなと考えて練習してきた」と、量より質の練習で結果を出した。

 和田コーチは「もともとトップになる自覚が十分にあって、手がかからない選手。足りないものは、海外の経験だけだから、5月のアジア選手権(インド)、9月の世界選手権(ロシア)、11月のアジア大会(中国)で海外経験をしっかり積んでほしい」と期待を寄せた。


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