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【特集】ピークは来年! 今年は結果にこだわらない!…男子フリースタイル74kg級・高谷惣亮(拓大)【2010年4月29日】

(文=増渕由気子、撮影=保高幸子)
 

 4月24〜25日に神奈川・横浜文化体育館で行われたジュニアとカデットの日本代表を争うJOC杯ジュニアオリンピックの会場には、今年の世界選手権(9月、ロシア)とアジア大会(11月、中国)の日本代表の座がかかった明治乳業杯全日本選抜選手権(5月1〜3日、東京・代々木競技場第2体育館)に出場予定の選手も多く来場した。

 高谷惣亮(拓大)もその一人。男子フリースタイル74kg級の優勝候補選手だ。弟大地(京都・網野高1年)のJOC杯優勝(カデット・フリースタイル50kg級)を見守った後、「次はオレの番ですね」と気を引き締めた
(右写真:高谷惣亮=左=と弟の大地)

■今年勝っても、来年負けたら意味がない!

 高谷は京都・網野高3年生で出場した2007年全日本選手権で準優勝し、大学入学直後には北京五輪の最終予選に抜てきされた若手のホープ。大学1年で全日本大学選手権を制し、2年生の時(2009年)は全日本学生選手権と全日本大学選手権で優勝し、学生二冠王に輝いた。

 申し分のない成績に見えるが、ロンドン五輪を見据える高谷からすれば、2008年の全日本選手権を病気で欠場してしまったり、小さなけががあったりと、世界で勝つ下地をつくり切れずにいた。

 今年は多くの選手が世界選手権とアジア大会を視野に躍起になっている。だが、高谷は違った。「アジア大会は出られたらいいですけど、そこまで執着心はないです。今年勝っても、(五輪出場権がかかる)来年負けてしまったら意味がないですから」。

 確かに、2006年のドーハ・アジア大会で男子は両スタイルで金1、銀1、銅3と計5つのメダルを獲得する活躍を見せたが、この5選手の中から北京五輪に出場したのは、2人だけ(グレコローマン60kg級の笹本睦と同84kg級の松本慎吾)。フリースタイルにおいては、メダリスト2選手を含めてアジア大会に出場した5選手全員が北京五輪の代表落ちしている現実がある。

 「五輪には執着心をどこまでも燃やしますよ」という高谷タイプは、アジア大会のためにあまり力まないほうが吉と出るかもしれない。

 大学3年になり、拓大のエースとしてもフル稼働が望まれる。高谷は「リーグ戦など学生の大会も頑張りたい」と、今シーズンはあくまでも飛躍の年と位置づけ、来年にピークを合わせる腹積もり
(左写真=昨年11月の全日本大学選手権に優勝して学生二冠王となった高谷)

 今回の全日本選抜選手権は、海外大会派遣の“副賞”にこだわらず、自分が納得いくレスリングを目指す。


■兄の応援に支えられ、高谷大地(京都・網野高)が大会連覇! 

 高谷の弟でJOC杯ジュニアオリンピックのカデット50kg級で勝って大会2連覇を達成した高谷大地は、初々しい表情で「とりあえずうれしいです」とはにかんだ。

 兄は“タックル王子”の愛称で知られる学生界のトップスター。弟の応援のために会場に駆けつけ、マットサイドから声を飛ばした。リードされる危ない場面も多かっただが、大地は「兄が近くにいて、気持ち的には楽になった」と、兄の声援を力に変えた。

 大地は兄より先にレスリングを始めた。後から始めた兄は、中学、高校、そして大学でもタイトルを総なめ。一方、大地は全国中学生選手権のタイトルは取れずに終わった(昨年2位)。「兄はかっこいい。僕の憧れであり、目標でもあり、超えたい人」と、兄の目の前で照れながら話した拓也。高校でのスタートは兄と同じ優勝で飾れたことにホッとしたようだ。


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