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【特集】新潟国体パワー健在! 橋本真也似の笹川久志(新潟・白根)が2位入賞【2010年4月2日】

(文=増渕由気子、撮影=飯島隆)
 

 風間杯全国高校選抜大会の個人84kg級の決勝戦。両コーナーの選手が入場してきた。赤コーナーは同大会の学校対抗戦で優勝を決めた松野裕也(茨城・霞ヶ浦)、青は地元の笹川久志(新潟・白根=右写真。左は林雄一監督)。試合は、笹川が常に先手を取るものの、松野のうまいコーナリングに阻まれ、バックと場外ポイントを奪われて0−2で惜敗。優勝の栄冠は逃したが、決勝のひのき舞台に立ったことは白根高校初の快挙だ。

■小学6年生の時、年下の洞口幸雄にわずか10秒でフォール負け

 負けて悔しそうにもせず、白根初の快挙にも笑顔も見せない。2位に終わった笹川はポーカーフェースのままだった。その高校生らしからぬ落ち着きようを見ていると誰かを彷彿とさせる。(プロレスラーの)橋本真也さんの風貌に似ているのだ。「赤い線が入っていた黒いジャージを履くともっと似ていますよ」と一番身近にいる林監督も苦笑するほど。決勝戦の入場シーン時にかかった音楽が一瞬、「爆勝宣言」に聞こえたのは筆者だけではなかったようだ。

 新潟市白根(旧白根市)といえば、昨年の新潟国体が行われた場所。国体開催が決まり、それがきっかけとなって林雄一監督が部を創設、キッズ教室にも力を注いで地域を挙げて強化してきた。国体は終わったが、過去に強豪県として輝かしい成績を残している新潟県のレスリング熱が冷めることはない。

 昨年のこの大会で、白根からは84kg級の高野智大が3位に入賞している。高野との競合を避け、笹川は昨年まで96kg級で闘っていた。今年からは96kg級で培ったパワーを生かして本来の階級に出場。3回戦では、一昨年秋の東日本少年少女選手権に出場してきたプロ格闘家・五味隆典に勝ち、スーパー中学生とも呼ばれる洞口幸雄(岐阜・岐南工)を撃破
(左写真=赤が笹川)。準々決勝では関東王者の亀山晃寛(群馬・大泉) を、準決勝では3試合をフォールで勝ち抜いてきた櫻庭正義(秋田・秋田商)に勝って決勝に進出した

 「洞口とはちょっと因縁があるんだよね」と林監督。実は、笹川がレスリングに燃えるきっかけとなったのが、洞口の存在だったという。もともと、レスリングを始めたのは、笹川いわく「肥満児だったから…」。肥満学級に通った時期もあったそうで、強くなることより、運動してやせることが目的だった。

 だが、小学校6年の時に出た大会で1つ年下の洞口にわずか10秒でフォール負けを食らった。その瞬間、笹川の本能が芽生えた。「あのときは、悔しくて泣いていたね」と林監督が振り返るように、勝ちたいという気持ちが生まれた。新潟国体のために、そしてライバルに勝つために−。笹川の目標は揺ぎなかった。

 2008年のJOC杯ジュニアオリンピックで再び洞口と対戦。林監督の「基本の反復練習を徹底してやらせた」という指導が実ってリベンジを達成できた。笹川は「勝ってうれしい」という気持ちになったという。今大会、3回戦で白星を挙げたことで「通算成績は2勝1敗になったね」と林監督が話すと、笹川は笑顔で頷いた。

■インターハイまでの課題は攻撃力

 洞口に勝ち、実力のある選手も次々と破ったが、勝因は「的が大きかったから」。昨年まで96kg級でファイトしていたため、亀山のような体が大きくて手足の長い選手とは噛み合うのだが、決勝戦の松野のように小柄の選手だと経験値が低くく、試合の組み立てのバリエーションが少なくなってしまうようだ(右写真:決勝で闘う笹川=青)

 笹川のレスリング・スタイルは、基本に沿ったオーソドックスなもの。8月のインターハ(沖縄)では2位の壁を破って優勝に期待がかかる。林監督は「ディフェンスが強いが、夏場は汗ですべるため攻撃力を強化しないと」と課題を挙げる。笹川も「2位に満足してない」と話すだけあり、沖縄インターハイまでの成長を誓った。


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