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【特集】香川中央から初めての全国高校選抜チャンピオン誕生!【2010年3月30日】

(文=増渕由起子、撮影=飯島隆)
 

 風間杯全国高校選抜大会の個人戦激戦区の60s級は、香川・香川中央の鴨居正和が昨年3位の桑原諒(静岡・飛龍)を破って初優勝。同校からは初めての全国高校選抜チャンピオンとなった(右写真)

 小学校4年生の時に親から勧められてレスリングをはじめた鴨居は、中学3年生の時に47s級の全国中学校チャンピオンになっている。「オレはチャンピオンだ」というプライドを持って高校に進学。だが、このプライドが鴨居の進化を止めてしまった。

 「全中チャンピオンになったのだから、自分が上だと思っていた」。1年の時の全国高校選抜大会はベスト8。対して、全国中学生選手権の決勝で勝った桑原諒(前述)は3位に入賞した。ライバルの成長を尻目に、スランプに陥った鴨居は中学時代の栄光を捨てることを決意した。「挑戦者の気持ちになろう」。

 2月下旬に組み合わせが発表されると、準決勝で新川武弥(京都・網野)と当たる組み合わせ。「一度も勝ったことがない相手だった」と不安ばかりが大きくなった。だが、全中を制した可憐なカウンター攻撃に助けられた。第1ピリオド、タックルを流してバックを奪い、第3ピリオドはクリンチをものにして勝利した。

■追い越されたライバルに勝っての優勝

 決勝戦の相手は桑原。飛龍は団体でも準優勝している。「団体で2位になっている」という現実が、鴨居の不安を増大させたようだが、やはりカウンター攻撃がさえた。相手がタックルに入ってきたところを押しつぶして2点を獲得。第2ピリオドは、クリンチで優先権を得て落ち着いて処理した。

「まさか勝つとは…」。沖山功監督も、鴨居の快挙を手放しで喜んだ。なんといっても、自身の教え子で初の選抜チャンピオンだ。「中1から指導をしている」と鴨居の全中制覇も、沖山監督の賜物だが、「強いけど精神的に弱い部分があるし、60s級では体が小さい」と弱点も見抜いていた。

    本人も弱点は理解していて、「減量がない状況なので、体を大きくしたい。力がないからカウンター攻撃に便りがちなので、それを直して自分で攻撃ができるようにしたい」と課題を挙げた。

 多くのチャンピオンが春夏連覇を次の目標に掲げたが鴨居は違った。「まだチャレンジャーでいたい」。全中王者の肩書きによって、高校では2年間も苦しんだ。高校チャンピオンの肩書きを手に入れた今、鴨居は同じ轍は踏まないと誓った。
(左写真:1年生王者の山崎=左=と高橋に囲まれて)

 観客席には、母の恵子さんの姿があった。聞けば鴨居は5人兄弟の末っ子。7つ上の長兄がいて、その下はなんと四つ子なのだ。四つ子でレスリングに取り組んでいるのは、4つ子の2番目、長女の奈央さん。現在は香川北でレスリングに取り組み、4月のクイーンズカップに出場予定だ。

   「本人が望めば、(大学、その上と)応援したい」と必死に、そしてうれしそうに表彰式のビデオを回していた。


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