【特集】今年も「打倒霞ヶ浦」の一番手? 創部5年目での全国王者目指す花咲徳栄(埼玉)【2009年2月7日】



 1月31日〜2月1日に東京・駒沢体育館で行われた関東高校選抜選手権の学校対抗戦で、前年チャンピオンの花咲徳栄(埼玉)は2回戦敗退。個人戦でも2階級の優勝にとどまった。

 同校は昨年、インターハイ王者に輝く赤澤岳など強豪選手を多く擁していた。霞ヶ浦のが城を2度にわたって崩し、インターハイでは創部4年目での優勝を目指した。しかし霞ヶ浦に3−4で惜敗。高校レスリング界の雄の意地に屈した。今シーズンは赤澤らが抜けて厳しい戦いが予想され、それが今回の関東高校選抜大会の結果に出た形となった。

■インターハイまでには打倒・霞ヶ浦の戦力をつくれる!

 だが、3年生にもまれて新しい芽も育ってきた。84kg級の細谷翔太朗は昨年の全国高校選抜王者の菊池峻(茨城・霞ヶ浦)を決勝で破っての優勝(左写真)。120kg級の岡倫之は大会連覇を飾るなど、3月の全国高校選抜選手権に向けての手ごたえは十分にある。ここ数年の快進撃のおかげで新入生のスカウトもうまくいったようだ。今大会は霞ヶ浦の後塵を拝してしまったが、半年後のインターハイまでには、また面白いチームを作れそうだ。

 高坂拓也監督は「今年は120kg級勝負で行きます」と、最重量級の岡に期待をかける。確かに霞ヶ浦が高校2冠王の森下史崇(茨城・霞ヶ浦)ら軽量級に強豪をそろえるのに対し、重量級は花咲徳栄に分がある。中軽量級で3勝し、岡に勝負を回せるかが今年の花咲徳栄のキーポイントだ。

 大将として高校ラストシーズンを送る岡は個人戦で危なげなく2連覇を達成した(右写真)。「前川勝利(霞ヶ浦)が追いついてきている。やるたびにスタイルが違う」と気持ちを引き締めるが、現段階では関東で敵なし。「まだ全国大会で優勝してない」と今年こそ全国制覇をを狙う。最大のライバルは、昨年のインターハイ準決勝で敗れた村木孝太郎(滋賀・栗東)。「攻めたけど、何もできなかった」と、3月でのリベンジに燃えている。

■勝負を120kg級まで持ち込めれば、絶対に勝てる!

 昨年、快進撃を続けた岡だったが、結局、全国では団体も個人も優勝できなかった。特に地元開催だったインターハイは悔しい思い出しかない。今年は、雪辱を晴らすために、新たな技の獲得に励んでいる。その一つはタックル。「動けるデブになりたい」と、重量級でも身軽な選手を目指す。

 3年が抜けた今年、チームのエースは紛れもなく岡になる。岡は「去年に比べて、今年は先生やOBの方にアドバイスをいただくことが多い」と、その期待を肌で感じている。今大会は団体戦で霞ヶ浦に敗北してしまったが、「全国制覇をあきらめてはいません」と打倒・霞ヶ浦を宣言した。

 打倒・霞ヶ浦という岡の強い志の原点は、高校1年生の時にさかのぼる。2007年の初夏、花咲徳栄は創部3年目にしてインターハイ出場を狙っていた。「3−3ともつれるから、120kg級のおまえで勝負だぞ」とチームの大将に指名された岡は、監督つきっ切りで指導を受けた。その予想は的中し、埼玉県予選で埼玉栄と対峙(たいじ)した決勝戦は、本当に120kg級勝負となった。しかし岡は期待に応えられず敗北。花咲徳栄のインターハイ出場は2008年に持ち越しとなった。

 「みんなが僕に期待してくれたのに、申し訳なかった」−。この悔しさは現在まで岡の心の中から消えたことはない。今年は、2年前よりいっそう、岡への期待は高まることだろう。「もう2度と悲しみたくはないです。期待を裏切りたくないので、内容が悪くても、勝つことだけは諦めません!」。

 初の全国制覇にむけて、気合を入れた岡。今年も霞ヶ浦−花咲徳栄の一騎打ちに注目が集まる(左写真=花咲徳栄の入賞者。左から細谷、岡、74kg級・池沢)

(文・撮影=増渕由気子)


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