女子ワールドカップ代表選手が公開練習で決意表明【2009年3月17日】



 東京・ナショナルトレーニングセンター(NTC)で合宿中の全日本女子チームが3月16日、報道陣に練習を公開。21〜22日に中国・太原で行われる女子ワールドカップ(W杯)に向けて、各選手とも気合の入ったスパーリングを見せた。今回の代表メンバーに参加する北京五輪のメンバーは55kg級の吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)のみで、若手中心で世界に挑む。日本は2006年の名古屋大会を最後に優勝から遠ざかっており、3年ぶりの優勝を狙う。

 北京五輪メンバーとして唯一の参加となった吉田は「私はロンドン五輪で3連覇という目標があるので」と、今回の合宿に参加した経緯を説明。2009年も世界を視野にフル稼働していくことを宣言した(右写真)。今回のW杯は松川知華子(ジャパンビバレッジ)の控えメンバーとして参加するが、「監督の指示があれば出ます」と試合への意気込みを見せた。

 今大会、吉田のその気にさせたのは、W杯の会場だ。中国の太原は昨年1月、吉田の前人未到の白星街道が「119」でストップした地。“嫌な場所だから行きたくない”ではなく、「同じ場所だから行く気になりました」と話す。「(去年は)負けて泣いて下ばかり見ていたので、今度は上を向いて、天井を見ていこうかなと思います。あの負けのおかげで北京で金メダルが取れたと思っています。(W杯の会場は因縁の場所じゃなくて)思い出の場所です。思い出の地で上を向きたい」と前向きで、モチベーションは右肩上がり。

 今年から地元・三重県の観光大使を務めることになり、この日も同県観光局の観光・交流室副室長・水谷寿氏らが訪れ、W杯での吉田の活躍を期待していた。

(取材・文=増渕由気子)


 ◎W杯日本代表選手のコメント

 ■48s級・三村冬子(日大)「シニアの試合は初めて。出場選手をチェックすると、外国はほぼベストメンバー。五輪とか世界選手権を優勝している選手が出てくる。今まではジュニアだった。シニア世界大会に出たことがないので、自分がどれだけできるか楽しみ。カナダのキャロル・ヒュン(北京五輪王者)と米国のチュン・クラリッサ(2008年世界女王)と闘ってみたい。攻めるレスリングをしたい。両足、片足、くぐりタックルで勝ってきたので、そのタックルを出したい。また、攻めた後に失点することが多いので、守るときも前に出るようにしたい」

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 ■51kg級・堀内優(京都・網野高=日大進学)「シニアの大会も団体戦も初めてのことで不安だが、シニアで(自分が)通用するかを知るいい機会だと思う。全勝して日本チームに貢献したい。アメリカの選手です。去年の世界ジュニアの2回戦で対戦して、投げられてフォールされそうになったからです。全日本選手権でを優勝した実感はまだ湧かない。自分が世界に出るのは、坂本日登美コーチを超えてからだと思っていたので。そうじゃないと本物じゃないと思っていた。今、坂本コーチからいろいろ教わっています」

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 ■55s級・松川知華子(ジャパンビバレッジ)「調子は順調です。北京五輪が終わって、(他の階級では)先輩に勝って世代交代をしているけど、私だけが勝てないまま。前向きな気持ちでがんばりたい。これまで大切な大会は2番手で、大きい大会に出られなくてトップ選手と対戦したことがなかった。今回のチャンスを自分のものにしたい。対戦したい相手は中国とモンゴルの選手。中国の選手は一昨年のW杯で負けて、モンゴルの選手には世界学生選手権で負けている。W杯は、正攻法で1点ずつ取って行きたい」

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 ■55kg級・吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)「チームが若くなり、ロンドン五輪を目指すメンバーになった。自分もベテランの域に入ってきたけど、私はロンドンで3連覇という目標がある。みんな(他の五輪メンバーは)は休養しているけど、私は休みを入れながら練習している。2月は旅行などして自分にご褒美を入れながらやりました。休みたいと思えば、休めるし、自分の意思で練習をやっています。でも、現在の中京女子大学のメンバーでは一番年上になり、「沙保里選手のようになりたい」という後輩たちのいい見本になるようにしたい。
 W杯に向けて試合モードになっている。W杯は監督からの指示があれば出ます。(昨年、連勝記録が途絶えた)同じ場所で開催することで行く気になりました。
 現在のスパーリング相手は井上佳子ら重量級の選手です。軽い相手とやると、手だけで倒してしまって試合で使えないので。父が全日本のコーチになることは、うれしいような、うれしくないような…(笑)。監督が一人増える感じです。栄監督といた8年間は精神的に鍛えられた。監督はロンドンに向けて、私に必要なのは父だと思ったんでしょう。私もあと10年もトップの選手としてやれないので、父と力を合わせてあと3年間、親子で(浜口親子のような関係を)築き上げたい。浜口親子にあこがれていましたよ(笑)」

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 ■59s級・山名慧(中京女大)「W杯は3回目になる。一昨年、去年と出ましたが、ともに3試合すべてに勝つことができなかった。今回は全試合に勝って日本チームの勝利に貢献したい。みんなで優勝したいです。試合ではリスクの少ないレスリングをしようと思っています。つぶれるようなタックルや、自分の構えが相手より高かったらダメ。確実にポイントにつなげられるようにしたい」


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 ■63s級・西牧未央(中京女大)「久しぶりの国際大会です。去年は(世界女王になり)結果を残せましたが、W杯の成績は1勝2敗。それが今大会のモチベーションになります。世界選手権で対戦した中国の選手がエントリーしている。気が抜けない相手なので、もう一回勝ちたい。W杯では自分から攻めるのはもちろん、外国人選手の直線的な押しに弱いので、主導権を握って崩しに行きたい。調子は順調です。早く、(伊調)馨さんに追いつきたいです。(今回の合宿で北京五輪組の多くが不参加の状況で)全日本の中で年上になり、甘えていては身が入らない。気持ちのコントロールができるようになりました。成長できる環境だと思います」

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 ■67kg級・井上佳子(中京女大)「東京・世界選手権のチャンピオン(マルティン・ダグレニエ=カナダ)が出ずに残念。闘ってみたかった。今回は2kgオーバーでの計量(67kg級は69kgで計量)。もともと体重が足りていないので、(相手は)いっそう重く感じると思う。崩して1−0で勝ちに行きたい。練習では吉田(沙保里)先輩とスパーリングをやっています。吉田先輩は力もテクニックもスピードもある選手。(最近は)吉田先輩のタックルを少し切れるようになった。それをW杯でも活かしたい。しっかりタックルを切って1点を取りたい」

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 ■72kg級・佐野明日香(自衛隊)「日本代表に選ばれた時は、(海外トップ選手と対戦する)不安と、闘ってみたいという気持ちの両方があった。メンバー入りに緊張している。対戦してみたい相手は北京五輪チャンピオンの中国の選手(王嬌)。力で対抗すると体も大きいし勝てないと思う。(バックボーンである)柔道の足技などを使った試合をしたい。去年のアメリカ戦では3−3で勝負が回ってきた(負けてチームの敗戦が決定)。今年もチームの足を引っ張ったらどうしようと言う気持ちがあるが、私も全日本メンバーでは一番上の年。もう、そいういう気持ちを見せない。浜口先輩が体験してきた世界が見れるのでドキドキしている。(浜口先輩が休んでいる間に)成長して、次に対戦するときにはいい勝負をしたい」


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