【特集】女子ワールドカップ出場選手の声【2009年3月24日】



■48kg級・三村冬子(日大)

○[フォール、2P1:19(@-1,F4-0)]LIU Jie(劉☆=中国)
○[2−0(3-0,1-0)]PAULAVA Volhaベラルーシ)
○[2−1(0-4,2-0,2-0)]CHUN Clarissa(米国)
●[1−2(@-1,1-@,2-A)]BALUSHKA Lyudmyla(ウクライナ)

 シニアの国際大会初出場の48kg級の三村冬子(日大)は、3回戦で世界チャンピオンのクラリッサ・チャン(米国)を破る殊勲を挙げ、チームでただ一人、全勝で初日を終えた。3位決定戦も勝利を目前にしていたが、まさかの首投げにかかり、ラスト1秒での逆転負け。世界で勝っていくことの厳しさを味わった。

 「自分の甘さを実感した。(逆転負けした)最後は何をやっているか、自分でも分からなかった」と振り返り、1点を争う激戦に冷静さを失ってしまったようだ。

 初日の3連勝は「自分のレスリングができた」と振り返る。世界チャンピオンを破る殊勲の白星は、第1ピリオドを0−4で落とし、「強い。力がある」と思ったという。ならば「思い切ってやろう。自分からポイントを取りにいくんだ」と開き直ったのが当たったようだ。

 チャンは世界選手権のあと練習らしい練習をしていなかったそうで、本格的な練習は3週間前だったという。それでも「世界チャンピオンになっている選手に勝ったのは自信になります」と話す。一方で「次に闘ったら勝てるかどうかは分からない。まだ練習しないとなりません」と気を引き締めた。

 世界チャンピオン撃破の経験を2週間後の全日本女子選手権に生かしたいところいだ。


■51kg級・堀内優(京都・網野高)

○[2−1(5-0,1-3,3-0=2:05)]DAI Shiju(代世菊=中国)
○[2−0(4-0,2-0)]SHUSHKO Nadzeva(ベラルーシ)
●[1−2(3-0,0-1=2:02,0-1)]MAROULIS Helen(米国)
○[2−0(2-0,1-0=2:11)]KOHUT Oleksandra(ウクライナ)

 3週間前に右肩を脱きゅうするアクシデントにもめげず、初めてシニアの国際大会の舞台を踏んだ51kg級の堀内優(京都・網野高)。1回戦の代世菊(中国)戦に勝ち、3位決定戦では昨年のゴールデンGP決勝大会優勝などシニアの世界でも成績を残していアレクサンドラ・コート(ウクライナ)を破るなど、世界でも通じる実力を見せた。

 しかし3回戦では米国のナゼバ・マロウリスにラスト10秒に根負けして黒星。カデットとジュニアでは国内外無敵の強豪も、シニアの世界では簡単に勝ち続けられない現実にもぶつかった。

 全試合終了後は「0−0のクリンチで勝ったピリオドもあって運に助けられた。自分のレスリングができなかった」と反省の言葉が続く。初めて闘ったシニアの外国選手は「パワーがあるので腕を取られたら振りほどけない。それで攻めることができなかった。粘りがあって、負けていても最後まで勝つ執念を持っている。カデットやジュニアとは違うところでした」と、これまでとは違う厳しさも味わった。

 しかし、初日の最後の試合で肩の負傷を悪化させながらも、最終日のウクライナ戦で力を振り絞って白星につなげた根性は称賛される。2週間後の全日本女子選手権までにはけがを完治させたいそうで、「世界選手権では(負けた)アメリカの選手に勝ちたい」と話し、気持ちはもう世界に向いている。

 4月からは網野高の先輩の三村冬子を追うようにして日大へ進学する。「階級が違いますけど、いい練習相手であり、ライバルです。負けないように頑張りたい」−。


■55kg級・松川知華子(ジャパンビバレッジ)

●[0−2(1-4,0-3)]XU Li(許莉=中国)
○[2−0(1-0,2-0)]HRYHORYEVA Tatsiana(ベラルーシ)
○[2−0(3-0,3-0)]JAYNES Leigh(米国)
○[フォール、1P1:53(F4-0)]PTITSYN Antonina(ウクライナ)

 初戦で北京五輪2位の許莉(中国)に敗れた55kg級の松川知加子(ジャパンビバレッジ)は、その後立ち直って3連勝。3位決定戦のアントニナ・プチシャン(ウクライナ)にはフォールで快勝し、次につながる内容と結果を残した。

 中国戦は、やはり五輪銀メダリストが相手ということで意識してしまったようだ。「緊張して自分の動きができなかった。タックルに入る勇気が出なかった。第1試合から自分の動きができるような精神力を身につけたい」と反省の言葉を話し、「前(軽量)の2階級が勝っていたのに、私が流れを止めたみたいで申し訳ないという気持ちになってしまった」という。

 の悔しさと反省をその後の試合に生かし3連勝。「最後の試合はいい試合ができました。あの試合での気持ちもって闘えば、いい結果が出ると思う」と、勝つために必要なものを感じた一戦だった。

 国内では吉田沙保里という大きな壁があるが、「国内で一番になって日本代表になり、また来たい」と話し、不落城へ挑む。


■59kg級・山名慧(中京女大)

●[1−2(0-3,0-3=2:05)]ZHANG Lan(張藍=中国)
○[2−0(4-0,5-0)]MIKHALKOVA Nadzeya(ベラルーシ)
●[0−2(0-1=2:03,0-1)]RIX Deanra(米国)
○[2−1(0-2,4-3,3-0)]VASYLENKO Ganna(ウクライナ)

 3年連続の出場となった59kg級の山名慧(中京女大)は、ベラルーシとウクライナに勝ち、中国と米国に敗れる2勝2敗の成績。「いいところまで攻めてもポイントを取り切れなかった。それでも負けは負け。『いいところまで攻めた』ではなく、きちんと取れるようになりたい」と気持ちを新たにした。

 最後のウクライナ戦では、ラスト10秒に3点タックルで逆転されながら、その直後にがぶり返しを決めて逆転勝ちした執念を見せた。「今までの私だったたら、あのままで終わり。逆転できたことは褒められる」としながら、「その前に3点取られるようではダメ。最低でも1点に抑えなければならなかった」と反省の気持ちの方が強いという。

 「リードすれば相手は必死に攻めてくる。時間の使い方がまだまだ駄目です」と、試合運びに課題の残した大会だったようだ。

 日本では正田絢子の壁がある以外にも勝ったり負けたりの成績。「国内で勝つことに必死で、正直言って世界で勝つためのことを意識して練習していなかった。これからは世界で勝てるような練習をしていきたい」という。もちろん「まず正田さんに勝つこと。正田さんがいなくての優勝、とは言われたくない。勝って優勝したい」と、全日本女子選手権に気持ちを向けていた・


■63kg級・西牧未央(中京女大)

●[1−2(1-0,0-1,1-@)]MENG Lili(孟麗麗=中国)
○[2−0(4-0,TF7-0=1:32)]HLEBIK Volha(ベラルーシ)
○[2−0(TF8-2=1:52,2-0)]PIROZHKOV Elena(米国)
○[2−1(2-0,1-2,4-0)]CHERKASOVA Alla(ウクライナ)

 世界チャンピオンとして初めての国際大会に臨んだ63kg級の西牧未央(中京女大)は、1回戦で世界選手権で勝った2005年67kg級世界チャンピオンの孟麗麗(中国)にラスト10秒で逆転負け。厳しい“世界チャンピオン・デビュー”となった。

 「世界選手権では、相手ががぶり返しに来たところを押さえこんで勝った試合だった。普通に闘えば、こんなもの(勝てない)。負けてしまった以上、去年の10月から何も進歩していないことです」と、自分に厳しく振り返った。

 世界選手権のあとは、「北京五輪に出場している選手が全員出ているわけじゃない。今回、勝って安心できない。五輪メンバーと試合をして勝ったら、(世界女王)という実感が湧くと思う」と話し、まだ本当の世界チャンピオンではない意味の言葉を口にしていた。今回はその言葉通りの結果。「やらなければならないことが多い」ということを知った大会となった。

 その後は3連勝して世界女王のメンツを守ったが、「もっと攻撃できたはず」と、欲の深いところを見せ、盤石の世界チャンピオンを目指す気持ちは十分。

 今大会は北京五輪チャンピオンのキャロル・ヒュン(48kg級=カナダ)と王嬌(72kg級=中国)をはじめ、48kg級の世界チャンピオンのクラリッサ・チャン(米国)も敗れるなど、五輪チャンピオン・世界チャンピオンといえども簡単に勝てない現実があった。群雄割拠の戦国時代に突入しそうな世界の女子レスリング。今まで以上に勝ち続けることが難しくなりそうだが、日本20人目の世界チャンピオンとしての今後の活躍が期待される。


■67kg級・井上佳子(中京女大)

●[0−2(0-1,0-1)]QIN Xiaoqing(秦暁慶=中国)
●[1−2(2-1,0-1=0:04,1-3]KHILKO Volha(ベラルーシ)
○[2−0(1-0,1-0)]GRAY Adeline(米国)
○[2−0(1-0,=2:03,1-0)]MLYNARSKA Viktoria(ウクライナ)

 1、2戦を連敗してしまった67kg級の井上佳子(中京女大)は、3戦目の米国戦と3位決定戦のウクライナ戦で勝ってメンツを守った。

 67kg級というのは、試合の決着がついているケースが多く、チームの負けが決まっていればムードは悪いし、勝利が確定していればいいムードの中で闘える。井上は「そうしたことを関係なしに、自分自身の闘い」と位置づけて臨んだ。「中国選手とか、まだ知らない強豪が世界にたくさんいることを知りました」と言う。

 闘った9ピリオドのうち、7ピリオドが1−0か0−1の試合。相手の攻撃を許さないかわりに、自らも攻撃できないわけで、「外国選手は投げ技を持っているので、どうしてもびびってしまう。1点を取って守りに入るのではなく、さらに1点を目指して最後まで攻撃するレスリングが必要です」と振り返った。

 ただ、0−1、0−1で負けながらも、中国戦は攻める気持ちが最後まであり、気持ちの面では負けていなかったという。それだけに確実にポイントを取れる攻撃がほしいところ。勝ち負けの差は紙一重の状態。栄和人監督(中京女大教)は「勝ち方を知れば、一気に伸びるんだが…」と話しており、潜在能力をいかに発揮するかがかが今後の課題となりそう。

 「気持ちはもう世界に向いています」と話し、世界女子選手権で勝って世界選手権へ一直線が描いている計画だ。


■72kg級・佐野明日香(自衛隊)

●[0−2(0-4,3-5)]WANG Jiao(王嬌=中国)
○[フォール、1P1:59(F3-1)]SHYNKAROVA Natallia(ベラルーシ)
●[フォール、1P1:45(F0-3)]LEE Stephany(米国)
○[不戦勝]VASHCHUK Oksana(ウクライナ)

 72kg級で世界選手権の出場に王手をかけている佐野明日香(自衛隊)は、ベラルーシに勝ったものの、北京五輪チャンピオンの王嬌(中国)とパンアメリカン・チャンピオンのステファニー・リー(米国)に敗れた。「いいところと悪いところの両方が出た。全日本女子選手権へ向けていい経験ができました」と話し、結果は五分ながらいい経験ができたと振り返る。

 いいところは、これまで組み合ったまま何もできずに2分間が終わることが多かったのが、動くことができ、タックルにも入れたこと。反省材としては、タックルを守ってもそこからさらに攻められると守り切れなかったことと、がっちり組み合った時に怖くて攻められなかったこと。できたことを伸ばし、悪いところを知ることのできた価値ある大会になった。

 五輪チャンピオンの王嬌との対戦は、やはりびびってしまい、第1ピリオドは何もできないまま0−4で敗れた。藤川健治コーチ(自衛隊)から「負けてもいいから全部出してこい」とアドバイスされ、「このまま終わったら意味がない」と開き直れたという。「北京チャンピオンからタックルでポイントを取れたことは大きな自信になります。勝てるかも、と思えた。ずば抜けた存在ではないことが分かりました」ときっぱり。

 世界のトップ選手と闘いを経験し、「またこの中で闘いたい」と、世界選手権出場の気持ちを強く持てた大会になったようだ。


《iモード=前ページへ戻る》
《前ページへ戻る》