【特集】霞ヶ浦が圧勝V! 戻ってきた往年の強さに、大沢友博監督は「今日は100点です」−【2009年3月29日】



 3月27〜28日に新潟・新潟市体育館で行われた風間杯全国高校選抜大会の学校対抗戦決勝戦で、高校レスリング界に不滅の金字塔を打ち立てている霞ヶ浦(茨城)が2年ぶり17度目の優勝を遂げた。

 1月の関東高校選抜大会で優勝したあと、大沢友博監督は「今年は全部獲ります」と四冠宣言。その言葉どおり、玉名工(熊本)を相手に迎えた決勝戦で7−0で完勝した。これで昨年の6月の段階で「0」だった霞ヶ浦に、3つ目の優勝旗(インターハイ、関東高校選抜大会、今大会)が戻ってきた(右写真=胴上げされる大沢監督)

■5戦35試合で、34勝(13フォール勝ち)1敗!

 ダントツの強さだった。初戦の名古屋工(愛知)戦の7−0での快勝を皮切りに、どの試合も圧勝。準決勝の鹿屋中央高(鹿児島)戦で120s級が敗れたほかは、1ピリオドも落とさずフォールかクリンチなしのストレート判定で勝利。重量級のエース・84s級の菊池崚まで勝負を回すことなく、すべてチームの勝ち星は4番手の66s級、砂川航祐主将が挙げた。決勝戦までの5試合中、計13個のフォールを奪う完ぺきな優勝だった。

 「今日は100点です」と大沢監督(左写真)も選手たちを評価。だが、「ものすごい練習を積んできた」と、それなりの準備をしてきたことを明らかにした。2年ぶりのVを目指してウエイトトレーニングはもちろん、心肺機能を上げる練習に力を入れてきたと言う。その結果はグラウンドで明白に表れた。グラウンドになると足が止まる他校に対し、霞ヶ浦の選手は動きが止まらない。タックルを切ってスタンドに戻そうとする相手を、しつこく追い続け、1アクションで確実にバックを奪うことができた。

 バックを奪ってからの攻撃も素晴らしかった。 “レスリングは点を取る競技ではなく、相手の背中をつける競技”と言わんばかりに、霞ヶ浦の選手はフォールにこだわった。それも大沢監督の作戦の一つ。「1ラウンドを6−0(テクニカルフォール)で奪っても、第2、第3ピリオドを0−1、0−1と落としてはもったいないから」と、連続ローリングなどで楽にテクニカルフォールを奪うより、少々時間がかっても、フォールを狙った。

 現在のルールは、クリンチに持ちこまれれば勝率は5割まで落ちる。霞ヶ浦は、ピリオド制や、延長クリンチ制度などルールの落とし穴にはまらないよう、徹底した作戦で勝利を重ねた。

■どん底からの復活を経験した選手がチームを支えた

 今大会、それ以上に光ったのが「強い気持ち」。昨年の全国選抜大会は決勝戦まで勝ち進んだが、推薦制度がなくメンバーが欠けている公立校の京都八幡に敗北。さらに、昨年6月の関東選抜大会で団体成績は2位となり、学校に“常設”してあった優勝旗がゼロに。無冠に落ちた。だが、そこからわずか2ヶ月で建て直し、8月のインターハイでは復活V。その優勝のカギとなったのが、「強い気持ち」だった。

 去年のどん底からの復活Vを経験したメンバー(50kg級のインターハイ・国体王者の森下史崇、インターハイ団体MVPの岩渕尚紀=60kg級、全国選抜選手権84kg級王者の菊池)が多く残っている霞ヶ浦には、他校の選手にない強さがあった。今大会までの道のりも決して順風満帆ではなく、実はけが人が多かったようだが、本番までには全員がマットに立てる状態に間に合わせた。

 どんな状態でも、わずかな時間でチームを立て直す力があった。選手たちの“勝ちたい”という強い気持ちがあれば、どんな困難も乗り越えられるようになった(右写真=応援団に感謝のあいさつをする霞ヶ浦選手たち)

 霞ヶ浦が次に狙うのは6月の関東高校大会の優勝。ここで勝てば、かつては当たり前のようにあった4つの優勝旗がすべて学校にそろう。その優勝旗の前を大沢監督は毎日通る。「この優勝旗が私を奮い立たせているんです」。次戦でビッグタイトル完全制覇を達成すれば、8月のインターハイでのV20が近づいていくる。

(文・撮影=増渕由気子)


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