【全日本女子選手権優勝選手】72kg級・佐野明日香(自衛隊)【2009年4月6日】



 72kg級は第一人者の浜口京子(ジャパンビバレッジ)が充電中で欠場する中、昨年12月の天皇杯全日本選手権を制している佐野明日香(自衛隊)が優勝をさらい、9月にデンマークで開かれる世界選手権への初出場を決めた。

 3人で争われたトーナメントは、1回戦で全日本選手権2位の新海真美(アイシン・エイ・ダブリュ)が前年度覇者の鈴木博恵(立命館大)を小差で振り切って決勝に進出。ファイナルは全日本選手権と同じ顔合わせとなった。佐野にとって新海は、決して得意な相手とは言えない。全日本選手権で勝利しているとはいえ、67kg級時代は2敗を喫している。

 しのぎを削るライバルとの一戦は、予想通り息詰まる展開となった。第1ピリオドは互いに決定打が出ず、勝負はスコアレスのままボールピックアップへ。攻撃権は新海に渡ったが、ここから佐野が踏ん張った。新海の体をガッチリと抱え込んでポイントを許さず、劣勢の状況から第1ピリオドを奪ってみせた。

 第2ピリオド、リズムをつかんだ佐野の動きに切れが増した。相手のタックルを強固なディフェンスで受け止めると、そこから見事に切り返してポイントを獲得。勝利の瞬間は、右手で小さなガッツポーズを作った。

 これで、いよいよあこがれの世界選手権が現実となる。本来なら大喜びしそうなところだが、72kg級の新鋭の頭を支配していたのは、うれしさよりも責任感だった。「この階級は浜口先輩がずっとメダルを取ってきた。自分じゃまだメダルを取れないと思われているし、自分でも今の実力じゃメダルは取れないと思っている。世界選手権までに、できるだけ自分のレベルをあげたい」

 具体的な強化ポイントは「自分から攻めてポイントを取ること。2分の間で1回くらいしか攻撃できない」と本人が分析するように、いかに攻撃力をアップさせるかに尽きる。世界選手権まではあと5か月。ロンドン五輪に向け、浜口を脅かす存在になるためにも、世界選手権を一皮むける契機にしたいところだ。

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)


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