【全日本女子選手権優勝選手】63kg級・西牧未央(中京女大)【2009年4月6日】



 2004年アテネと2008年北京の両五輪で金メダルを獲得した伊調馨(ALSOK綜合警備保障)が昨年12月の天皇杯全日本選手権に続いて出場を見送った63kg級は、昨年の世界選手権優勝の西牧未央(中京女大)が圧倒的な強さを見せて優勝し、2年連続で世界選手権への出場を決めた。

 さすがに世界女王は強かった。決勝の相手は全日本選手権と同じ工藤佳代子(自衛隊)。相手がだれであっても、今のの西牧には関係なかった。試合開始と同時にタックルを決めるアグレッシブなスタートを切ると、最後まで攻めの姿勢を崩さず、最後はテクニカルフォール勝ちでフィニッシュ。守っても大会を通じて無失点という安定感を見せつけた世界王者は「しっかり(世界選手権の)代表権を取ることができてほっとしている。今日は自分から攻めるというレスリングができたと思う」と納得の表情を浮かべた。

 昨年、東京で開かれた世界選手権で優勝し、伊調馨の対抗馬として名乗りを上げた。世界選手権連覇に期待がかかる中、本人は今年の大会について「東京大会のように、すんなりとはいかないと思う。ひとつ一つの試合を大事にしていきたい」と思いのほか慎重だ。このように気持ちを引き締めるきっかけとなったのが、3月に中国で開かれたワールドカップでの敗戦(対孟麗麗=中国)だったという。

 「あの時は先にポイントを取ってリードしながら、直線的に攻めてくる相手に対して真っ直ぐ下がってしまい、逆転されてしまった。ワールドカップの反省点を世界選手権で生かしたい」と言う西牧が、世界選手権連覇に向けてさらに口にしたのは、精神と体力の充実だった。「第3ラウンドに入っても自分のレスリングをすること。つまり攻め続けること。体だけでなく、気持ちでも最後まで攻め続けることです」と話した。

 2012年ロンドン五輪に出場しようとすれば、最終的に伊調馨との対戦が待ち受ける。し烈な代表争いに勝利するためにも、攻め続ける姿勢が不可欠ということなのだろう。そこを磨く絶好の舞台が今年の世界選手権だ。見事に連覇を果たせば、さすがの五輪チャンピオンとて、うかうかしてはいられなくなるはずだ。

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)


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